龍馬の傷を癒した、薩摩の古い湯治場。/塩浸温泉・妙見温泉

12

 

【鹿児島県:塩浸温泉/妙見温泉】

 

JR肥薩線、嘉例川駅。

ひさつせん、かれいがわえき、と読む。

鉄道好きにはお馴染みというか、有名なようだが、

一般の人にはどの程度知られているものだろうか?

 

開業は、なんと明治36年。築100年をゆうに超える

当初からの木造駅舎で、無人駅である。

 

01

 

土日には、「かれい川弁当」という地元の業者が

駅弁を販売するようだが、この日は平日だったので売ってない。

駅舎内は、がらーんとしている。

ただ、電車を待つ人のカバンが無防備に置かれていた。

 

02

 

 

ここから妙見温泉行きの「温泉バス」に乗って、

塩浸温泉へ向かった。ちなみに客は私ひとり。

運転手さんと話などしながら向かう。素朴な鹿児島弁が耳に温かい。

 

また、読みづらい地名が出てきたが、塩浸温泉(しおびたし)温泉と読む。

江戸時代からある古くて小さな湯治場だが、

2009年の大河ドラマ「龍馬伝」の絡みで紹介されたことで有名になった。

 

04

 

 

バスを降りたのは、ここから徒歩20~30分の最寄りのバス停で、

そこから、ゆるゆると歩いて来ようとしたのだが、

途中で親切な軽トラのおっちゃんが車を停めて、

「乗っていきやんせ」(たぶん、こんな感じ)と声をかけてきたので、

ご厚意に甘えたのであった。おかげですぐに着いた。

 

ここは坂本龍馬が、妻のおりょうを連れて

湯治にやってきた場所であることから、こんな銅像まで建っている。

 

05

 

 

龍馬は、1866年(慶応2年)の1月21日に

「薩長同盟」を成立させ、2日後に寺田屋で幕吏に襲われた。

このときに腕を斬られて負傷した龍馬は、薩摩藩に匿われ、

療養を兼ねての薩摩行きを勧められている。

 

3月4日に京都を出発し、10日に鹿児島到着。

それから1ヶ月ほど、日当山温泉・塩浸温泉・霧島温泉に滞在、

束の間の安らぎを満喫した。これは新婚旅行の先駆けといわれている。

 

中でも塩浸温泉は龍馬らが、実に20日近くも滞在した逗留地。

龍馬とお龍が実際に入浴したとされる湯船が現存している。

建物の脇、川べりの斜面にあるのが、「龍馬・おりょう湯治の浴槽」である。

 

06

 

 

もちろん、2人がこの湯船に入ったという確証はないが、

これは、この場所に江戸時代から残る最古の湯船だそうで、

もしかしたら、本当かもしれない。

 

立地上、道路からは丸見えだし、客は入ることができないようになっているが、

無理やり、入りに行く熱い龍馬ファンもいるのだろうか・・・?

 

「げに、この世の外かと思われるほどのめずらしきところなり」

当時、龍馬が、姉(乙女)に送った手紙には、そう記されている。

 

龍馬は、このすぐ下の川で魚を釣ったり、

ピストルで鳥を撃ち落としたりして過ごしたとか。

今は日帰り施設しかないが、当時は宿屋もあったようだ。

 

今はすぐ脇に道路が走っていていささか無粋だが、

幕末の当時は自然に囲まれた本当に素晴らしい眺めだったのだろう。

 

あくる年、龍馬は近江屋で刺客に襲われて落命してしまうが・・・。

この温泉で過ごした日々は、彼の激動の生涯の中で

心から寛げたひとときだったに違いない。

 

07

 

 

今の入浴客が利用できるのは、その上にある日帰り入浴施設。

男女別の内湯が2ヶ所あり、それぞれに泉質が異なっている。

入口では、人参やお米が無人販売されていた。安い・・・。

 

08

 

 

浴室はタイル張りで風情には欠けるが、程よくひなびていて嬉しくなった。

塩分を濃厚に含む炭酸水素塩泉で、本当によく温まる。

源泉の温度は53度で、かなり熱かったが

先客が入りやすいように整えてくれていたのかもしれない。

 

うっすら濁っているのは、それだけ成分が濃厚な証。

龍馬も痛む右腕を浸したに違いないし、

さぞや沁みたに違いないが、よく癒えたのだろう。

 

ちなみに、これらの写真は2008年に訪れたときのもので、

現在は改装され、ずいぶんときれいになっている。

 

塩浸温泉は、2009年に建物の老朽化で一旦閉鎖となったが、

大河ドラマ人気を受けてか、2010年にリニューアルされて復活。

「龍馬公園」として龍馬の資料館なども併設され、

軽い観光地に生まれ変わっている。入浴料は250円だったが、今は360円。

 

この写真にあるほどの、ひなびた雰囲気は失われているようで残念だが、

閉鎖されてしまうことを考えれば、復活したのは喜ばしい。

 

塩浸温泉は日帰り施設なので、この日は、

近くの妙見温泉まで移動して宿をとった。

09

 

妙見温泉は、川沿いに数軒の温泉宿が建ち並ぶ、昔ながらの湯治場。

「げに、この世の外かと思われるほどのめずらしきところなり」

ふと、龍馬の言葉を思い出してしまうような、惚れ惚れする風情だ。

10

 

そのうち1軒の「田島本館」は、創業140年近い老舗。

新しい造りの新館に加え、自炊施設のある旧館を残している。

旧館は本当に昔ながらの木造(左の建物)。私にはこのほうが落ち着ける。

 

近くにものを売っている場所がなさそうだし、

温泉街という場所でもないから、

夕飯は用意してもらうことにした。1泊夕食付5380円なり。

素泊まりだと2900円ぐらい。旅人には本当に有難い価格設定だ。

 

11

 

極めて質素な夕飯だったが、これぐらいだと、ちょうどいい。

貧困一人旅ならこれで十分である。

この日、実はにわかに体調を崩し、

身体がダルかったので、お粥にしてもらった。

 

浴室の風情もまた最高であった。

泉質は塩浸温泉と似ているが、こちらのほうが

長く空気に触れているせいか、青みがかって見える。

私が風呂で一番好きなのは、やはり桧やヒバで設えられた木造の湯船。

湯のぬくもりが一番よく感じられる気がするからだ。

木造だと湯船のへりで、ごろんと横になって寛ぎやすいのもいい。

 

その次に岩風呂、タイル張りが来る。

岩風呂も露天風呂などで雰囲気があって好きなのだが、

内風呂の場合は、やはり木造に一歩譲るか。

そのぶん、管理や清掃が大変なのだろうなあ。

 

先客の老人と龍馬の話で盛り上がった・・・

ということはなく、単に世間話をした。

 

宿泊客ではなく、近所の人だそうで、

ほぼ毎日浸かりに来るのだそうだ。

 

13

 

 

こんないい湯が近所にあるなら、私も毎日浸かりに来たい。

東京では、今は銭湯の値段も高騰しまくって水道水なのに400円も取られるが、

ここは250円。まったく、めずらしき話ではないか・・・。

 

塩浸温泉

http://kagoshima.pmiyazaki.com/ryoumap/

田島本館

http://tajima.main.jp/modules/tinyd0/

 

●記事:哲舟

※当サイトのすべての文、画像、データの無断転載を堅くお断りします。

mail5555

2013-09-05 | Posted in 四国/九州No Comments » 

関連記事

Comment





Comment