大量の湯量に支えられる昭和の温泉パラダイス/ゴールデンランド木曽岬温泉

【三重県 ゴールデンランド木曽岬温泉】※閉業しました

いよいよ平成も終わり新しい元号になるわけで

そうなると、ますます昭和は遠くに成りにけりとなってくる。

ああ、あのおおらかだった昭和よ……

そんな昭和を象徴するもののひとつとしてあったのが

ヘルスセンターである。

あったでしょ?農協の団体さんがバスでダーッと行って

温泉入って、風呂上がりは演歌のショーで盛り上がる。

……みたいな感じの。

あれもまた、おおらかな昭和だった。懐かしいなぁ。

ところが、そんなヘルスセンターが今もあるんですね。

しかも、現役で、当時の姿をそのまんまとどめたままで。

たとえるなら、シーラカンスを生け捕りしたって感じか。

 

「ゴールデンランド木曽岬温泉までお願いします」と、

近鉄弥富駅からタクシーを拾って、約8kmの道のりを向かう。

いや、もう、「ゴールデンランド木曽岬温泉」と口にするだけで

ワクワクしてきます。あの頃のネーミングですよね。

ロマンスカーとか。アルプス食堂とか。スナック初恋とか、ね。

「はい、着きましたよ〜」と、

到着したそこは……

おお、まさしくこれは生けるシーラカンスだねぇ。

昭和な感じの入り口のアーチや

「今話題の天然温泉」と書かれた看板や

やたらめったら鯉が泳いでいる池とか、

なんだか興味引くものがいろいろあって、

いきなり入ってしまうのがもったいなかったので、

ちょっとまわりを歩いてみた。

うん、いいねぇ、いいねぇ。

ワクワクしてきたぞ。

 

ということで、アーチをくぐって入ってみる。

受付にはきっぷのよさそうなおばあちゃんがいて、

自然と「どっからきたの?」「東京からきましたよ〜」

てな感じの会話になった。

「じゃり風呂入ってってね」とおばあちゃん。

「なんすか?じゃり風呂って?」とボク。

「まぁ、指宿とかの砂風呂のパクリなんだけどね、

うちはじゃりなのよ。アッハッハッハ。でも、砂よりも

じゃりのほうがいいんだから。みんな、そういってるよ!」

とおばあちゃん。

いいねぇ、いいねぇ、いいねぇ。

 

期待に胸を膨らませて、いざ浴室へ!

……と、歩き出したはいいものの、

館内にも興味深いものがあり過ぎて歩みがいちいち止まる。

時が止まっている感がたまらない。

「マッサージコーナー」が「マツサージコーナー」に

なっているところなんかグッとくるねぇ。

 

なかでも気になるのが広い客席と大きなステージ。

聞いたことのない演歌歌手のポスターがベタベタ貼られている。

このステージは現役なんだろうか?

でも意外と土日なんかは大盛り上がりだったりして。

でも、飲食店っぽいコーナーはどう見ても現役ではなさそうだ。

しっかし広い館内だなぁ。

さてさて、お風呂へいこう。

ガランとした館内を奥に歩いていくと浴室がある。

中へ入ると広い脱衣所。温泉水の冷水と温泉水でつくった麦茶が

無料で飲めるようになっている。

おお、これはぜひとも湯上がりにいただこう!

で、浴室へ入ると……

な、なんだ、これは。

広い。でも目を奪われたのは、それではない。

数十人は入れるであろう、やたら大きな湯船。

その大きな湯船の向こうに城がそびえ立っているのだ。

あたかもそれは琵琶湖のほとりにそびえる城のような。

ん?よく見ると立派なしゃちほこをいただいた天守閣。

ということは、このお城は名古屋城か?

浴室にそびえる名古屋城。しゃちほこもちゃんとあるだぎゃぁ。

いやぁ〜、なにもかもがおもしろい。さすがゴールデンランドだ!

でも、ここ、いろいろとおもしろいんだけど、

おもしろいだけではないのですね。

普通はこんなふうに、やたら大きな湯船っていうのは

それを満たす湯量が必要なわけで、

たいていは加水することでなんとか満たしている。

当然、そのぶん源泉が薄くなっちゃうわけで

ハコモノのホテルなんかそういうのが多いわけ。

でも、ここ、ゴールデンランド木曽岬温泉は、

加温、加水なしの源泉かけ流しなんですね。

なんと1分間に約900リットルという源泉湧出量。

さすがゴールデンランドだ!

 

ということで、さっそく湯に浸かってみると、

おお、熱い。これだけ広くてこれだけ熱いのも珍しい。

湯は薄い緑がかった褐色で湯の華も舞っている。

熱さがビシッときながらも肌当たりのいい湯だ。

う〜ん、湯に浸かるとこの城の眺めもまた

一段といい感じになったような、ならないような(笑)

湯船は2/3ぐらいが浅めになっていて寝湯ができるよう

トド寝枕とマットなんかも置いてある。

丸い湯船もあって

こちらは加水されていてぬるめの湯になっている。

気になっていたのが、

みんな浴室に入ってくると、まず体を洗って、

そして適当に湯に浸かったかと思うと、ある一角へと消えていくのだ。

あ、これかぁ。さっき受付のおばあちゃんがいっていた「じゃり風呂」って。

砂のベッドに寝て浅くたまっている湯に浸かるというわけですね。

実際浸かってみると、なるほどこれは気持ちいいや。

じゃりがちょうど自分の体を包み込むようにフィットしてくれる。

ここの湯は熱いから、じゃり風呂のほうが長湯ができるというわけだ。

じゃり風呂以外にも

じゃりサウナもある。でも、こちらは誰もいない。

まぁ、この暑さだもんね。

このじゃりサウナルームの上に

なんとも年季の入った温泉分析表示があって、

これがまた、この大浴室空間に味わいをそえているのだ。

湯上がりに受付のきっぷのよさそうなおばあちゃんと

しばし雑談。聞けばここが繁盛していた頃は、

団体様のバスが何台もやってきたとのこと。

ということは、あの広い湯船も、ステージの前の客席も

たくさんの人で埋まっていたんだろうな。

おばあちゃんに写真撮っていい?

と聞いたら、あたしなんかより、ほら、この子たちを撮ってよ。

……と、飼い犬の写真を見せてくれた。

ということで、おばあちゃんごとパシャリ。

いやぁ、おもしろかったなぁ、湯もとてもよかったし。

ゴールデンランド木曽岬温泉。

この地球上にまたひとつ好きな場所ができたぜい。

 

■ゴールデンランド木曽岬温泉
住所:三重県桑名郡木曽岬町源緑輪中794
電話:0567-68-1131
入浴料金:600円
時間:10:00~20:00(毎週水曜日定休)

記事:ショチョー

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2018-08-06 | Posted in 近畿/中国No Comments » 

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