野生を呼び覚ます噂の泥湯にどっぷりと。/別府温泉保養ランド

th_P5170047

【大分 明礬温泉/鶴寿泉、別府温泉保養ランド】

 

鉄輪温泉のみゆき食堂で名物の別府冷麺を食べている時のことだった。

食堂のおじさんが唐突に訊いてきた。

「これからどこいくの?」

やけにニコニコしている。

これから別府へと答えようと口を開く前にたたみ込むようにいった。

「すっごい、おすすめの温泉があるんよ。すっごいんだから、ホントに!」

 

th_IMG_0169

th_IMG_0171 

 

なんでも鉄輪温泉のさらに上に行ったところに、

すごい温泉があるというのである。

でも、なにがどうすごいのかは教えてくれない。

「まあ、行けばわかるから」

そういって観光マップを取り出して、手慣れた動作で別府温泉保養ランドと

書かれたところをボールペンでぐりぐりと囲んでくれた。

「ここ、行ったらねぇ、たぶん引くよ~!」

 

引くよといわれて、引くわけにはいかない。

これはもう、行くしかないですね

 

というわけで、バスに乗って鉄輪温泉の隣の明礬温泉へと向かった。

明礬温泉といえば、三角屋根の湯の花小屋が立ち並ぶ風景だ。

湯の花の採取は、温泉に沈殿したものを採取するのが通常のやりかた。

しかし、ここ明礬温泉では自噴する蒸気を小屋の中で結晶化させるという、

江戸時代から続く独特なやりかたで採取している。

だから純度も品質も高い。世界で唯一の採取法であって、

平成18年には国の重要無形民俗文化財にも指定された。

まさにここでしかお目にかかれない風景なのである。

 

th_IMG_0180

th_IMG_0176

th_IMG_0183

th_IMG_0185

 

みゆき食堂のおじさんいわく、

「鶴寿泉(かくじゅせん)っていうね、無料の温泉もあるから、ぜひ入っていってね。いいお湯だから」と。

そして付け加えるのを忘れなかった。

「だけど、本命はね、別府温泉保養ランドだけどね」

 

th_IMG_0190

 

おじさんのすすめにしたがって
まずは「鶴寿泉」へ。

もともとは久留島藩の藩主がこの地を訪れたときに

お殿様用に特別につくられた浴場がこの「鶴寿泉」だったという。

無料の入浴施設だけど、入り口にお地蔵さんと賽銭箱が置いてあった。

まあ、ここはやっぱり他所からやってきた者なわけだから、

100円くらいは入れておこう。

お地蔵さんの横には「鶴寿泉」のスタンプがおいてあって、

それがなかなか、かわいい。

 

th_IMG_0193

th_IMG_0196

 

「鶴寿泉」の湯船は2人入ればいっぱいになるような小さいものだけれど

このこじんまり感が逆にいい感じだ。

湯の色は薄めの乳白色で、ほどよい硫黄臭がする。

殿様のためにつくられたという由来を思うと、なんか贅沢な気分になってくる。

ほほ~う、まことによき湯じゃ…なんて感じにね。

 

th_IMG_0194

 

 

さて、いよいよ“本命”の温泉へと向かう。

「別府温泉保養ランド」は「鶴寿泉」から歩いて10分ほどのところにある。

名前からしてまったく風情を感じられないけど、

実際の建物も、病院?学校?役所?って感じのまったく風情を感じさせるところがない。

 

th_IMG_0208

th_IMG_0210

 

入り口には「露天鉱泥大浴場」とか「コロイド硫黄温泉」とか書いてあった。

なるほど、泥湯か。この病院みたいなところのどこかに泥湯の大露天風呂がある…。

うん、なんか、怪しげでちょっと心惹かれるものがあるかもしれない。

 

まずはフロントで入浴券を買って。

入り口の看板の「大地からこんこんと湧きでる温泉の底知れぬパワーをいただき~」に

ちょっとグッとくる。

 

th_IMG_0211

 

各種浴場入口の廊下を通って、

 

th_IMG_0213

 

屋根付きの通路を歩いて、

 

th_IMG_0216

 

けっこう歩いて、

 

th_IMG_0218

 

湯けむりももくもく、

 

IMG_0227

 

またまた各種浴場入口と書かれてあって、

 

th_IMG_0220

 

休憩所に到着。湯上がりはここでくつろげるようになっている。

 

th_IMG_0225

 

さらに進むと、

トイレみたいなマークがあって、でも、これが男湯、女湯の入り口だ。

 

th_IMG_0224

 

最初にあったのがコロイド湯。

乳白色の湯で、20~30人は入れそうな大きな湯船だ。

 

th_P5170033

 

ちょっと独特の雰囲気がある浴場だけど、まあ、広くて気持ちいい湯だ。

その横に「泥湯入口」と書かれた地下への階段があった。

そこここに泥がこびりついている。

 

th_P5170036

 

恐る恐る降りていくと、

むむむ?なんだか木材がはりめぐらされたすごい空間が現れた。

 

th_P5170042

 

あたりに泥がこびりつき、ブルーシートがなんだか建設現場みたいな

雰囲気をかもし出している。

これだ。泥湯だ。

みゆき食堂のおじさんがいっていた「引くよ~」とは、

これに違いない。

確かに…、引いた(笑)

そぉ~っと湯船に入ってみると、はりめぐらされた木材の意味がすぐにわかった。

注意しないと底にたまっている泥で足がすべってしまう。

木材は手すりだったというわけだ。

 

th_P5170040

th_P5170038

 

湯の温度はぬるめで、長くつかっていられそうだけど、

成分が濃厚なため、つかりすぎると湯あたりする。

だから入浴時間の目安が書いてあるのだが、なぜか肝心の時間のところに

ガムテープが貼られていた!

 

th_P5170039

 

さて、身体が泥だらけなのでシャワーで流して、

いよいよ「露天鉱泥大浴場」へと向かった。

 

途中、いきなりスッポンポンのおばちゃんたちと鉢合わせ。

えええ?もしかして女湯にきちゃったのか!と思ったら、

間違っていたのはおばちゃんたちのようだった。

「露天鉱泥大浴場」男女別であるが、湯船も丸見えであり、

ほぼ混浴のようなシチューションなのである。

そういえば脱衣所に

「前を隠してね、タオルをあててね」と書かれたかなり素朴な貼り紙があったっけ。

なるほど、こういうときのためでもあったのか。

 

th_P5170056

 

で、「露天鉱泥大浴場」へ。

いや~!これもなんか圧巻な風景。泥の巨大な露天風呂である。

濃厚な泥なので風呂に見えない。

泥につかっているようにしか見えない。いや、泥につかっているわけだから、その通りなんだけど…

 

th_P5170047

th_P5170043

 

湯はこちらもぬるめ。そしてなんともいえない開放感がある。

周りの景色もいい。まあ、大きな露天風呂だから開放感があるのは

当たり前かもしれないけれど、なんていうんだろう?この一瞬入るのがためらわれるような

泥湯につかると、なにかまたひとつ気持ちのタガがはずれて、より開放感が感じられるのです。

巨大な泥湯空間という非日常なシチュエーションがそう感じさせるのだろう。

うんうん、あのみゆき食堂のおじさんがああまでもすすめた理由がよくわかった。

温泉好きならば、なるほどこの湯は一度、はいっておかなくっちゃ。

 

th_P5170050

 

「露天鉱泥大浴場」の脇に小屋のような入口があって

小ぶりの露天風呂があった。

 

th_P5170044

 

入ってみると、こちらの湯はもっと泥が濃厚で、まさにどろどろだ。

湯船の底もぬるぬるで、気をつけてはいらないとすっ転んでしまいそうだ。

泥をすくって肌になすりつけている人も少なくはない。

この泥パックが肌にとてもよいのだそうだ。

でも、おじさんがするものでもないような気がするな、と…、

わたくしオジサンは思ってしまうのである…(笑)

 

th_P5170046

 

 

泥湯をたっぷりと堪能した後は食堂で、ビールぐびぐび飲みながら、

脱衣所の壁に貼ってあった、嵐山光三郎センセーの言葉を思い起こす。

センセーもこの別府温泉保養ランドを訪れて

泥湯にいたく感激したというのだ。

 

th_P5170052

 

「湯が熟しきってとろりと生きている。情が深い泥のからみつきかたに動物的な色気がある」

さすがは嵐山光三郎センセーである。

なるほど、動物的な色気ね。

あの濃厚な泥湯につかったときの気持ちのタガがはずれたような感じは、

そういうことなのだ。理性が麻痺して野性的な感覚を呼び覚まされる、そんな感じ。

 

動物的な色気…うまいこというなあ。

と、しみじみ思う。

ビールも進む。

濃厚な温泉でほてった身体に、スポンジに水が染み込ていくように、

ビールがジュワ〜っと体中にいきわたっていった。

 

th_IMG_0242

 

別府温泉保養ランド:http://www18.ocn.ne.jp/~hoyoland/

 

記事:ショチョー

※当サイトのすべての文、画像、データの無断転載を堅くお断りします。

2014-08-14 | Posted in 四国/九州No Comments » 

関連記事

Comment





Comment