箱根にもひなび湯があったの巻/上湯温泉浴場・弥坂湯
【神奈川 上湯温泉浴場・弥坂湯】※上湯温泉浴場は閉業しました
箱根といえば高級温泉旅館というイメージがあって
ひなびた温泉とは無縁の地である。と、自分も思っていた。
ところが、箱根にも、ちゃんとひなびたジモティーな共同湯があるっていうんです。
じゃあ、いくっきゃないっていうことでいってきた。
小田急のロマンスカーに乗っていざ箱根湯本へ。
といきたいところだけど、まずは小田原で途中下車。
なぜか?それは小田原の名物駅弁「特選小鯵押寿司」を買うために。
おいしいんですよ。「特選小鯵押寿司」。
鯖寿司ほど重くなく、ほどよい塩加減がビールにもぴったりあう。
これを買っていって、湯上がりのビールとともにいただこうというわけ。
いやあ、楽しみだなぁ。
小田原駅の売店で「特選小鯵押寿司」を買って、
そこからは箱根登山鉄道に乗って塔ノ沢に向かった。
塔ノ沢駅で下車して歩いて3~4分のところに「上湯温泉浴場」がある。
塔ノ沢温泉は、江戸時代から名湯として名高い箱根七湯(他、箱根湯本温泉、
宮ノ下温泉、堂ヶ島温泉、底倉温泉、木賀温泉、芦之湯温泉は)のひとつで、
篤姫や伊藤博文ゆかりの老舗高級旅館「環翠楼」があることで有名だ。
で、「上湯温泉浴場」は、その「環翠楼」から建物をひとつ挟んだ並びにある。
源泉は「環翠楼」と同じなので、「上湯温泉浴場」の湯につかるということは
篤姫や伊藤博文、その他、夏目漱石や島崎藤村といった文豪たちが
愛した湯と、同じ湯につかるということになるわけで、
ちょっと心揺さぶられるものがある。
「上湯温泉浴場」へ向かう道の途中にラーメン缶の自動販売機コーナーが
あったので、思わず歩み寄る。
「中華そば」「とんこつラーメン」「味噌ラーメン」…
さらに、ラーメンだけではなくスープパスタまである。
これは買うっきゃないと思って、お金を入れるところを見ると、
ガムテープでふさがれてあった。残念、今は使われていないようだ。
気を取り直して「上湯温泉浴場」へと向かった。
風格ある「環翠楼」の建物を過ぎると、
なんとも古びたアパートのような建物があって、
奥の煤けたクリーム色のモルタルの建物が「上湯温泉浴場」である。
渋い。うん、たしかにこれは箱根っぽくないなあ。いいねえ。
入り口の引き戸を開けると、そこには古めかしい番台があった。
番台のおじさんに入浴料500円と休憩場使用料200円を払って浴室へ。
こじんまりとした脱衣所に、こじんまりとしたタイルの浴室。
湯船は3~4人くらいでいっぱいになるようなサイズ。
う~ん、ほんとうにあるんだねえ。箱根にもこういう共同浴場が。
と、ちょっとした感動を噛み締めながら湯船に入ると、
湯は熱め。無色透明で、かすかな硫黄臭がある。
肌にいい感じにじわりと熱さで、いい湯であることがすぐにわかる。
さすがは「環翠楼」と同じ源泉だ。
源泉はかけ流しなんだけど、湯口は湯船の中にあって、
小さな穴が湯船の中にあって、そこに細いパイプが差し込まれた
ユニークというか、チープというか、ちょっと変わった湯口である。
あー!いい湯だったなぁ。
さてさて、楽しみにしていた「特選小鯵押寿司」で
湯上がりのビールを楽しもう。
というわけで、2階の休憩室にいくと…、
ここがまた、昭和にタイムスリップしたようなナイスな空間だったのだ。
「上湯温泉浴場」の休憩室でつかの間味わったナイスな時間の
余韻にひたりながら、てくてく歩いて、次は箱根湯本へと向かった。
箱根湯本駅あたりは飲食店や店がたくさんあって観光客も多い。
そこから約1kmほど歩いた旧東海道沿いに「弥坂湯」がある。
赤い温泉マークの下に大きく弥坂湯の文字看板。
藍染めの暖簾に「ゆ」の文字が気持ちよく染め抜かれている。
うんうん、なかなかいい面構えの建物ではないか。
中に入るとここも昭和な感じの番台があった。
おばちゃんに入浴料650円を払って脱衣所へ。
「弥坂湯」の浴室も昭和なタイル張り。
そのど真ん中に、特徴的な真ん丸の湯船がある。
4~5人くらい入れる大きさだ。
湯はこちらも熱め、無色透明、硫黄臭は「上湯温泉浴場」よりも
若干少ないかな?湯はいい感じである。
先客はなし。この丸い湯船を独泉できるのはかなりうれしいではないか。
かつては、ここ箱根の湯が将軍家への献上湯として
遠く江戸城まで運ばれていったというだけあって、
箱根の湯はやっぱいいなぁ。
で、そんないい湯をジモ感あふれる共同浴場で入れるのはうれしい。
この「上湯温泉浴場」「弥坂湯」以外にも
共同浴場があと3つあるそうなので、いつかはその3つも制覇しよう。
帰りは、せっかく箱根湯本にきたのだから、と、
箱根湯本人気の蕎麦屋「山そば」で蕎麦をアテに
湯上がりのビールをいただいた。
■上湯温泉浴場
神奈川県足柄下郡箱根町塔之澤112 TEL 0460-85-7683
入浴料 入浴料500円 休憩場使用料200円
■弥坂湯
神奈川県足柄下郡箱根町湯本577 TEL 0460-85-5233
入浴料 650円
記事:ショチョー
※当サイトのすべての文、画像、データの無断転載を堅くお断りします。