油臭系温泉の聖地で悪魔的な油臭の洗礼を受けてくる/新津温泉

【新潟県 新津温泉】

新津温泉……
ああ、もうこう書いただけで鼻腔の奥に
あの悪魔的な油臭が立ちのぼってくる。
油臭がする温泉はほかにもいろいろあるけれど
ここはレベルが違う。完全にレッドゾーンをぶっちぎっている。
フツーの温泉しか知らない素人さんは、
決して近づいちゃあいけないぜ。フッフッフ。
……と、そんな温泉なんだから。

そもそも、なぜ新津温泉はあれほどまでに油臭いのか?
実は、聞けば納得まちがいなしの理由があるのだ。
なんてったって、この新津温泉がある新潟市秋葉区は
日本一の石油の産油量を誇った油田地帯だったのだから。
1996年まで石油の採掘がおこなわれていた。それほど遠い時代ではない。
そんな日本一の油田の栄光を
今に伝える石油の里公園なんていう公園だってあるのだ。
(どんな公園なんでしょうね? 油臭い公園だったりしたら……ウケる!w)

 

つまり日本一の油田地帯だったわけで、
そこに日本一かもしれない油臭の温泉があったって、ちっとも不思議ではない。
ていうか、そんな場所に温泉があることのほうが不思議な気がしませんか?
だって石油の採掘ががんがんされているところに温泉が自噴するのも考えにくいし、
自噴ではなく、掘った温泉だとしたら、そんな場所で温泉掘りますかねぇ?と。
ところがところが、実はそこにこの温泉のヒミツがあったのだ。
なんでもこの温泉、石油を掘ったつもりが
温泉が湧いてきちゃったっていう温泉だったりする。
本来の目的とは違った思いもよらないものが出てきてしまった。
つまり、瓢箪から駒的な温泉だったというわけ。

とまぁ、そんな新津温泉は、

JRの新津駅から歩いて20分ほどのところにある。
駅前通りをてくてく歩いて、新町大橋(でも、大橋というほど大きくないのでご注意を!)という橋で右手の川沿いの小道を歩く。この小道が突然のどかになって歩いていて楽しい。

 

で、川が大きく蛇行するあたりに新津温泉はある。
住宅地にトタン板のボロい建物がポツンと立っている。
工事現場のプレハブの建物か? と思わずにいられない、そんな風情にグッとくる。

 

そして「天然湧出 新津温泉」と書かれた看板の文字がギリギリ読めるレベルで風化しているところにグッとくる。
ここが紛れもなく、全国の油臭系温泉マニア憧れの聖地なのである。
うんうん、ひなびた温泉の聖地はこうでなきゃねぇ。
入り口の引き戸のガラスのところになにやら白いテープが貼ってある。
ガラスの補修かな?と思ったら、よく見ると「入口」という文字になっている。ううむ。なんだかめんこいではないか。

中に入るとこれまたいい感じにボロいんだな。建物がつぎはぎになっているのか意外と広いようだ。

日帰り入浴は400円。600円払えばなんと一日中何度でも入れる。
あの濃厚な油臭の極上湯に一日中! 一度トライしてみたいなぁ。
料金払ってさっそく浴室に向かおうとして、フト、廊下の入り口のポスターに目をうばわれる。朝よ来ないで/椿ひとみ。いいなぁ、ローカルで。

 

長い廊下を歩きつきあたると、いよいよそこは浴室だ。
簡素な脱衣所で服を脱いで、湯船がもうガラス越しに見えている浴室の引き戸を開けたら、あなたは驚くに違いない。

むわ〜っと油臭が鼻腔を攻めてくる。
なんてったって油臭の聖地の湯なのだ。
まずは出会い頭の油臭を吸い込んで思いっきり楽しもう。

 

浴室には楕円形の湯船がひとつ。大人4人でいっぱいといったところ。
そこにたたえられている“湯の表情”を見て欲しい。
若干濁った透明の湯は、見るからに表面張力の高そうなぬらりとした感じ。入らなくても湯のとろみがわかるほどだ。

こういう湯に浸かる瞬間が毎度のことだけどたまらないんだよね。

 

さて、この湯。強烈な油臭がするものの、浴感はとろりと体を包み込んでくれるようなやさしさがある。湯温も40度ぐらいの適温。
湯がかけ流されている湯口にはなにやらネットがかぶされている。手ですくって湯を口に含みとめっちゃしょっぱい。しょっぱさとかすかなタマゴと鉄の味。なんとも複雑で決してうまいものではないけど、成分が濃厚で、他にはない貴重な湯であることがよくわかる。

そしてこの湯、ものすごく温まる。しょっぱい湯はおうおうにして体の芯まで温めてくれるけれど、ここ新津温泉の湯はそこ半端ない。なんていうか温泉の成分がじわじわ体に染み込んでくる感じでたまらない。
浴室もいい感じにひなびていて、そんな空間でこんな極上湯に浸かっていることがたまらなく幸せに感じられるのだ。
こんな温泉が近所にあったら、さぞかしいいだろうなぁ、と。

さて、新津温泉のような強烈に個性的な湯に浸かってくると、困った副作用があるのである。東京に帰ってきてしばらくしてから風呂とかに入っているときに、新津温泉の記憶が蘇ってくるのだ。あの浴感を今強烈に体が欲している!
でも、あんな唯一無二な湯は新津温泉にしかない。ああ、またあの湯に浸かりたい。油臭に包まれたい。
まったく小悪魔な湯だぜ。またいくしかないじゃないか。

 

■新津温泉
住所:新潟県新潟市秋葉区新津本町4-17-13
電話:0250-22-0842
入浴:400円(8:00~19:00、無休)

2020-11-22 | Posted in 関東/中部No Comments » 

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