ビバ!ジモ泉/吉松温泉・前田温泉・原口温泉

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【鹿児島 吉松温泉・前田温泉・原口温泉】

 

吉松温泉ビジネスホテルに宿をとろうと思ったのは、

そこにしか宿がなかったからである。

吉松温泉に良質のモール泉として評判のジモ泉がある。

出張ついでにジモ泉をめぐってみよう。

ということで宿を探していたのだ。

 

宿に電話をしてみるとご主人らしき人が電話に出たので、

泊まりたい旨を伝えると…

「あ…?」という声があって、しばらく間があいたかと思うと、

おばあちゃんぽい人が出てきて、「いつじゃっとな?」と聞いてきたので、

今度は日にちを伝えると…

「何曜日だったかねえ?」

というわけで曜日を伝えると…

「食事はつかんよ?」と…

あ、どこかで食べて済ますのでだいじょうぶですよ。と

答えて、連絡先と名前を伝えたら…

「あ、おんなじ名前じゃねぇ〜!」と、おばあちゃんの声が急に明るくなった。

偶然、自分と苗字が一緒だったようである。

とりあえず吉松温泉ビジネスホテルに無事、宿がとれた。

 

なんだか、楽しい旅になりそうな予感がした。

 

吉松温泉ビジネスホテルはJR九州吉都泉(きっとせん)の鶴丸駅から、

歩いて10分ほどのところにある。

鶴丸駅は無人駅である。

このへんでは無人駅はめずらしくはないけれど、

駅舎らしきものもまったくない鶴丸駅はホームがなければ

まったく駅に見えない。一日の平均乗車人数は7人ぐらい。

駅前の商業施設といえば、鶴丸温泉があるだけだ。

 

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ここは小さいながらも露天風呂があったりして、

内湯もレトロタイルがいい感じの湯船なんで、ぜひともつかっていきたかったけど、

なんせ、出張ついでの旅なので、あまり時間がない。

後ろ髪ひかれる思いで鶴丸温泉を後にして、吉松温泉ビジネスホテルへとむかった。

 

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ちょっと歩くと目印のドライブインがすぐ見つかった。

この裏に吉松温泉ビジネスホテルはある。

いや、あるはずなのだけど…

ん?

 

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割れた看板に、よ・し・ま・つ・お・ん・せ・ん・び・し…

 

もしかして、ここ?

吉松温泉ビジネスホテル?

 

入り口らしきほうへいくと、「大衆家族ブロ 岩ノ湯」という

看板があり、温泉マークの看板が車庫のシャッターの前に

捨てられたかのように立てかけてあった。

 

ワイルドだぜ、吉松温泉ビジネスホテル。

 

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敷地内に入っていくと、犬と遊んでいるおじさんがいた。

あの電話に出たおじさんだと確信しながら、

予約したことと名前を伝えると…

 

「お~!同じ名前じゃね」

 

( …………! )

 

「あっちに入り口があるから、そこから入ってね」

 

ということで入口に行って、引き戸を開けると、

ちょっとカオスなロビーが目の前にあった。

一見、シングルソファがずらりと並んでいるように見えたけど、

ん?これ、特急車両かなんかの電車のリクライニングシート?

で、なぜかひとつひとつに安っぽい造花のレイがかけてある。

キャベツ人形みたいな人形があって、その膝の上には、

なんていったらいいのかわからない人形がお揃いでのっている。

「受付」と書かれたところは完全に機能していない…

 

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「すみませ~ん」と声をかけたら、しばらくしておばあちゃんが出てきた。

たぶん、あの電話のおばあちゃんだ。

ふたたび予約したことと名前を伝えると…

 

「あーら、わたしも同じ名前なんよ」

 

(……やはり、そうきたか!w)

 

通された部屋は、こじんまりした民宿のような部屋だった。

ジャケットを脱いで、ハンガーにかけようとしてフックをさがすと…

フックはなく、その代わりに釘が刺してある。

 

ワイルドだぜ、吉松温泉ビジネスホテル。

 

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さて、さっそくジモ泉にいこう。

 

その前に、この吉松温泉郷について簡単にふれておくと、

吉松温泉郷は温泉旅館が軒を連ねる、いわゆる観光地的な温泉街とは違う。

ほとんどが地元の人のためのジモ泉で、地元の人の入浴料は月極だったりする。

で、その湯は、黒いモール泉。地下の有機物が多い泥炭層から湯が湧き出ているため

黒く、ツルツル感のあるなめらかな湯なのだという。

 

最初に向かったのは前田温泉。

国道268とJR吉都線が交差するあたりにあるので

迷いようがないと思ったのだけど、甘かった。

 

そこには温泉らしきものはなにもなかった。

民家があるだけ…

ん?ここかな?どう見てもただの家なんだけど…

と、ちょっと建物を回ってみたら、「前田温泉」と書かれた

小さな看板が立てかけてあった。

 

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おお~、渋い。

ひなびまくった空間。その真中に年季の入ったモルタルの浴槽が、

黒い湯をなみなみとたたえてドンそこにあった。

 

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湯船はふたつあって、ひとつは寝湯になっている。

湯につかってみると、やわらかな感じで心地よく、

烏龍茶のような色をした湯はモール泉独特のかすかな油臭がある。

身体に効きそうな感じだ。

 

風化してほとんど意味をなさない鏡もいい味出しているなあ。

 

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次に向かったのは原口温泉である。

こちらは道標や大きな看板があったから場所はすぐわかった。

ただ、温泉施設というよりは、田舎の商店にしか見えない。

でも大きな温泉マークがついているのだから、間違いなくここだろう…と、

中に入ると…、

 

えええ?ここは八百屋?

 

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野菜やら果物やら乾物やらが

ところ狭しと置かれていて、わかりづらいのだが

よく見ると入浴料が書かれた貼り紙が貼ってあった。

奥の方に「男」「女」とそれぞれ表示された引き戸があったので、

どうやらそこが風呂の入口のようである。

う~ん、ここも、なかなかカオスだ。

 

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脱衣所は広々としていて、

なぜか大きなたぬきの置物が置いてあった。

浴室も前田温泉にくらべて、こちらはいくぶん広めで、

モルタルではなく年季の入ったタイルの空間だ。

 

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湯は前田温泉とほぼ同じ感じで、若干こちらのほうが

色が薄いような気がしないでもない。

やはりツルツル感があって肌にやさしい。

そんな湯につかりながらしみじみ思った。

あの八百屋みたいな店の奥に

こんなひなびた温泉空間が広がっているなんて…

なんていうか、現代の隠し湯みたいでグッとくるなあ、と。

 

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ふたつのジモ泉を堪能して、ふたたび吉松温泉ビジネスホテルに戻った。

吉松温泉ビジネスホテルと名乗っているからには、ここも温泉なのだ。

入らないという手はないでしょう。

まず、“部屋の中の温泉”にはいった。

そう、吉松温泉ビジネスホテルは、小さいながらも各部屋に温泉がついている。

 

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ほぼ家庭用サイズの湯船のお湯をドバドバドバッと入れると…

おお!なんか濃い。

前田温泉や原口温泉よりも濃いコーヒー色な気がする。

湯につかってみても、なんか、やっぱり濃い。

 

やるじゃないか、吉松温泉ビジネスホテル。

 

ということで期待しながら別棟の家族風呂へとむかった。

吉松温泉ビジネスホテルは、宿泊客はあまりいないようだけれど、

お風呂の方は地元の人にけっこう利用されているようである。

 

家族風呂なので、50分の貸し切りだ。

誰も入ってこないので気がねなく、この濃いモール泉につかっていられる。

ありがたいなあ。

心も身体もふにゃふにゃになるまで、このコーヒー色の湯を堪能した。

 

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翌朝、吉松温泉ビジネスホテルをチェックアウトし、

近くの市場をひやかしながら、

店員さんが自らつくっているという、シンプルでおいしそうなおにぎり弁当を買った。

 

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帰りの列車のなかでおにぎり弁当を食べながら思った。

しかし、こういうジモ泉につかると、なんでこんなに心が落ち着くのだろう。

観光ホテルの温泉ではこういう気持ちは味わえない。

なんかそこには経済活動的なせわしい時間とは関係ない時間が流れていて、

湯につかると同時に、そんな時間にどっぷりとつかることができる。

それがジモ泉めぐりの楽しみなんだなあって、しみじみ思った。

身体が確実によろこんでいることがよくわかるのである。

うん、よろこんでいる。よろこんでいる。

 

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■吉松温泉ビジネスホテル 素泊まり3000円

鹿児島県姶良郡湧水町鶴丸335−8‎

0995-75-3390

 

■前田温泉/入浴料200円

鹿児島県姶良郡湧水町鶴丸1281-2

0995-75-2139

 

■原口温泉/入浴料200円

鹿児島県姶良郡湧水町鶴丸1172

0995-75-2045

 

記事:ショチョー

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2015-05-31 | Posted in 四国/九州No Comments » 

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