番台スタイルの激渋湯を求めて/人吉温泉・共同湯めぐり

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【熊本 人吉温泉:堤温泉、元湯、鶴亀温泉】

以前、人吉温泉を訪れたときに、新温泉という、

「新」がついているのに、ぜんぜん新しくない激渋温泉銭湯があった。

ここが、たまらなくよかったんですね。

なんていうか時間がいきなり、自分が生まれる前ぐらいに戻っちゃったような、

それはそれは、ホンモノのレトロ激渋温泉銭湯があったんです。

「新温泉」が紹介されている記事はこちら(別ウインドウで開きます)

で、そこで逆に新鮮だったのが、今じゃあめっきり見なくなった、

あけっぴろげな番台だったんですね。

今の銭湯にも番台はあるけれど、番台から脱衣所は見えないようになっている。

新温泉は番台は、昔のあけっぴろげな番台スタイルで、

脱衣所にはロッカーなんかはなく、常連客の石鹸やタオルが入った洗面桶とかが、

まるでスナックのボトルキープみたいにズラリと並んでいた。

そんなところに、グッときたわけ。

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聞けば、こういうノリの激渋な温泉銭湯が人吉温泉にはまだあるそうで、

なるほど、それならばいくっきゃない!…というわけで、いってきた。

人吉温泉にいくにはJR九州肥薩線の人吉駅で降りる。

人吉温泉は熊本県の温泉だけど、鹿児島県からも近くて、

鹿児島とかで温泉旅館でどんちゃん騒ぎというと、人吉温泉にいくのが定番だったりするのだ。

かつての東京と熱海みたいな関係なのだといえばわかりやすいかもしれない。

さて、人吉駅で降りると目を引くものがふたつある。

ひとつは、人吉城をモチーフにしたからくり時計。

人吉城のお殿様が城下見物をするシーンが、

民謡「球磨の六調子」にのせて展開される、からくり時計だ。

そしてもうひとつは「汽車弁当 人吉駅弁」と

看板をかかげたレトロな建物だ。

「汽車弁当」だなんて、なんか旅情を誘いますねぇ。

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そう、人吉には九州を代表する名物駅弁が「栗めし」があるのだ。

栗の形のお弁当箱の中には甘い栗が贅沢に載せられた炊き込みごはんがつまっているという、

フタを開けると誰もがうれしくなるようなお弁当なのである。

というわけで、まずは「栗めし」を買った。

お昼ぐらいになったら、球磨川のほとりとかで、この「栗めし」を食べよう。

うん、そうしよう。それしかない。

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最初に向かったのは堤温泉。

新温泉よりも古い共同浴場だ。

新温泉とおなじような大きな三角屋根が印象的な、

激渋レトロな外観に思わずテンションが上がる。

それもそのはず。なんせ堤温泉は大正時代の建物なのだから。

そういう建物が現役でフツーに街中にあるって、いいですよね。

つまり、そういう街なんですよ、人吉は。

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さっそく中に入ると、番台は無人だった。

と、いうか、人の代わりにモニターが置かれていた。

モニターには番台の様子が映し出されていた。

つまり、防犯カメラみたいなカメラが番台を常時撮影していて、

モニターに映し出されているというわけだ。

無人だけど、見張らている感満載な無人番台…。

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入浴料200円を料金箱に中に入る。

脱衣所はリフォームされているようだった。

しかし、浴室の引き戸の向こうには古色蒼然とした激渋な世界が広がっていた。

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湯船は真ん中にドンとひとつ。ふたつに仕切られていて、

掛け流しの湯が注がれている湯船は普通の深さで、その先の湯船は浅め。

仕切りは完全に仕切られてなく、仕切りの下のふたつの通水口でつながっていて、

当然、湯が注がれている湯船の湯のほうが熱い。

湯は無色透明の単純温泉。ちょっと熱めの湯の刺激が心地よい。

激渋空間での入浴っていうのは、

なんていうか現代の時間と切り離された感じがするんですね。

せわしない時間の外にいるような感じがとてもいい。

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次に向かったのが人吉温泉元湯である。

元湯は日本百名城にも選ばれている人吉城の麓にある共同浴場だ。

こちらも70年以上の歴史をもつ温泉だが、リフォームされたのだろう、

あまりふるさは感じられない、しかし入母屋造りの風格を感じさせる建物である。

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中へ入ると、番台があって、人のよさようなおばちゃんが座っていた。

うん、うん、やっぱり番台は無人じゃないほうがいいねえ。

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たぶん、大きなリュックを背負った自分の姿が、いかにもよそ者にうつったのだろう。

「どこからいらっしゃいましたの?」と、おばちゃん。

「あ、東京から出張のついでに来たんですよ~」と自分。

しばし温泉のことや人吉城の城跡のことやら、立ち話を。

こういうレトロな番台越しの立ち話っていうのもいいもんですねえ。

浴室には赤茶色の御影石で縁取られた正方形の湯船がひとつ。

壁に比べて床は新しい感じなので、ここもリフォームされたのだろう。

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さっそく湯につかってみると、

ん?肌で感じるジワジワ度がなんかいい感じだ。

湯は無色透明の単純温泉で熱さもちょうどいい。

さすがは元湯を名乗るだけある。

いい湯だなあ、

人吉城の城跡の麓っていうシチュエーションもいい。

別に湯船から城が見えるというわけじゃないけれど、

なんていうか、城の麓に湧くいい湯につかっているって思うと、

なんとなく気分がいいのですね。

ま、あくまでも気分の問題ですが。

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いい湯を満喫した後は、せっかくだから人吉城城跡を散策してみた。

なんとも気持ちのいい芝生の公園があったので、

そこで駅前で買った「栗めし」をいただいた。うまい!ごろごろの栗がうれしいな!

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天守閣跡がある高台からは人吉の町並みが見下ろせた。

こういう眺めは城跡の醍醐味ですね。まさに城下町。

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さて、次に向かったのは鶴亀温泉だ。

どうです?“鶴亀温泉”っていう、いかにも昭和初期な名前に

すでにグッときません?

と、そんな期待に胸ふくらませていたら、

いきなり雨がザーザーと降ってきた。

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鶴亀温泉は、駅からちょっと離れた住宅街にある共同浴場である。

ザーザー降りの中、本当にこんな住宅地のなかに温泉があるのかなあ?

と心細くなりながら歩いていたら、いきなりあった。

レトロな感じの、なんていうか田舎の公民館みたいな建物。

なにげにかわいい感じである。

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鶴亀温泉の脱衣所も床が張り替えられているようで、

床と浴室のアルミサッシの入り口以外は激渋である。

料金は300円。こちらも昔懐かしいあけっぴろげな番台スタイルである。

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湯船は真ん中で仕切られた石の湯船がひとつ。

手前の湯船は浅く、寝湯用となっている。

湯口が恵比寿様の顔になっていて、口から湯がどばどば湯船に注がれていた。

恵比寿様かあ、これは味わい深いなあ。

浴室の激渋度はこの鶴亀温泉がいちばん高い。

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湯は若干褐色かな?という感じのモール泉ぽい湯。元湯や堤温泉よりも

ぬるぬる感がある感じ。

しかし、やっぱり、この恵比寿様の湯口がなんとも効いてますね。

これを見ていると、だんだんと、だんだんとありがたい感じがしてくるわけで、

ああ、温泉ってありがたいよなぁ~なんてことをしみじみ思ってしまうのですよ。

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ザーザー降りで時間もそれほどなかったこともあり、

実はちょっと諦めかけたけど、来てよかったなあと。

そんな満足感を感じながら湯を上がると、

はたして番台のおじさんは眠りこけていた。

なんだか、グッときた。

忘れていたのどかさが、ここにはある。

いいなあ、人吉温泉は。

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堤温泉 入浴料200

人吉市土手町40

電話:0966223207

元湯 入浴料200

熊本県人吉市麓町9

電話:0966 (23) 3054

鶴亀温泉 入浴料300

人吉市瓦屋町1120-6

電話:0966 (22) 3221

記事:ショチョー

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2015-09-28 | Posted in 四国/九州No Comments » 

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