ミョーに落ち着く昭和なとろとろ湯/山鹿温泉・熊入温泉センター

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【熊本 山鹿温泉:熊入温泉センター】

熊本の山鹿温泉といえば、幻想的な山鹿灯籠まつりが有名ですね。

メイン通りの豊前街道には、昔ながらの宿場町の面影を残しながら、

それでいて、その情緒をいかしたおしゃれなお店なんかも軒を連ねている。

平成24年には昭和48年に惜しまれながら取り壊された「さくら湯」が、

江戸時代の建築様式を色濃く残す往時の姿そのままに復元されて、

山鹿温泉の新名所となった。

その堂々とした純和風の建築は、

松山の道後温泉本館を思い浮かべずにいられないのだけれど、

聞くところによると、山鹿温泉は

まさにその道後温泉を参考にしているのだという。

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で、そんな山鹿温泉に、そういった盛り上がりを無視したかのような

なんとも昭和な大衆浴場があるというのです。

その名も熊入温泉センター。

どうです?名前からして、おおらかでグッとくるものがありますよね。

この熊入温泉センター。おおらかながらも、歴史ある伝統の湯でもある。

時をさかのぼって、今から約700年前の延元年間のころ、

この地の領主だった菊池武時(きくちたけとき)公の家臣、

八幡弥四郎が発見したといわれていて、

いつのころからか、近在の人や旅人の憩いの場として

親しまれるようになったのだという。

熊入温泉センターは山鹿バスセンターバス停から歩いて15分ほどのところにある。

でも、今回はあえて山鹿温泉のシンボル「さくら湯」から

豊前街道を歩いていくことにした。約30分ほどの距離だ。

豊前街道は江戸時代から栄えていた歴史のある街道で、

あの篤姫もこの街道を駕籠に乗って旅したのだという。

なるほど、篤姫もここを通ったのかぁ…と、

頭の中で思い浮かべる篤姫は、たぶん誰もがそうであるように、

宮崎あおい扮する篤姫であることはいうまでもない。

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豊前街道を歩いていて気になったのが、

あちらこちらに飾られている提灯である。

それがまた、なんともお茶目でひょうきんな提灯なのだ。

気になったので、たまたま通りかかった地元の人に聞いてみると、

なんでもチブサン古墳という、ここ山鹿で発掘された装飾古墳の

壁面に描かれた絵からデザインされた提灯なのだという。

斬新な古代のセンス!岡本太郎が見たらきっと喜ぶはずだ。

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八千代座を過ぎると豊前街道もだんだんと寂れてきて、

廃墟のように崩れかけた家なんかがぽつりぽつりとあったりする。

県道200号線を越えると辺りものどかな住宅地になって、

こんなところに温泉なんかあるのかなあ?といった感じになってくる。

しかし、ちゃんとあるのだ。

しばらく行くと「熊入温泉センター」と看板が掲げられた煙突が見えてきた。

よく見ると「泉」が取れていて「熊入温 センター」になっている。

いいねぇ。うん、うん、好感もてるぞ。

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そこには、いかにも「熊入温泉センター」って感じの建物が建っていた。

おお、ここだ、ここだ、と、ちょっとうれしくなる。

「2F大食堂」と大きく書かれた看板には「温泉に入って・食事をして・演芸を見て!」

というフレーズが添えられてあった。

また、別のところには

「近代的設備を誇る名実共に温泉郷の代表 熊入温泉センター」という看板もある。

どちらの看板も色あせている。おそらくこの看板が掲げられたのは昭和に違いない。

誇らしげに「レーザーカラオケ」が強調されているところに、そんなことがうかがえる。

フレーズ自体もいかにもおおらかな昭和のものだ。

しかし…、

「レーザーカラオケ」の強調がほとんど“血痕”みたいなところにグッとくるなぁ(笑)

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入り口に自動販売機があって、入浴券はそこで買う。200円だった。安い。

中へ入ると番台に人のよさそうなおばちゃんが座っていて、

「下駄箱のロッカーは有料だけど、中のロッカーはお金が戻ってくるからそっちのほうがとくだよ」

と教えてくれた。見た目通りのいい人だ。

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脱衣所もガラス越しに見える浴場も、ちょっと大きめのよくある銭湯っていった感じである。

なにやら張り紙が貼ってあるので見てみると、

「かさっぱちの湯」だとか「乙女の湯」だとか「皮膚病によく効く」とか書いてある。

かさっぱちって、かさぶたのことだったっけ?

そうそう、そういえば、ここ熊入温泉センターの湯は古くから薬湯としても

伝えられてきたってネットに書いてあったなぁ。

「カラオケの練習ができます」と書いた貼り紙もある。

ええ?まさか風呂の中で?そんなわけないよね?

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湯船は3つの湯船で構成されている。

上がり湯と、ジェットバス、普通の湯船。

まずは普通の湯船につかってみた。

無色透明の単純泉、ぬるめの湯。なめらかなとろみがあって、実にいい感じだ。

温泉の効用を皮膚でじんわりじんわり感じながら長くつかっていられそうだ。

なるほど、これは乙女の湯とか薬湯といわれるのも、うなずける。

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次にジェットバスの湯船につかってみた。

こちらはぬるすぎず熱すぎずといったところでちょうどいい感じ。

上がり湯の湯船から熱い湯がオーバーフローして湯が注がれて適温になっている。

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たまたまなのかもしれないけど、

まわりを見ていると、ジェットバスにつかって「あ~っ」とジェットを堪能して、

それからおもむろに、ぬる湯のほうへ移って、

じわ~っと湯につかっているっていうパターンが多い気がする。

うん、その気持、わかるなあと、自分もぬる湯のほうへ移った。

やわらかい湯にぼぉ~っとしながらつかっていると

この大衆浴場空間がなんとも心地よく感じられてくる。

激渋やレトロというわけではない、でも、おおらかな昭和の時代のまんま

時間が止まっているような、味わいがにじんだ空間。

そうか、思えばここは、もう何百年も人々の憩いの場として

親しまれてきた場所だ。

そんな場所だけが持つオーラを今感じているのかもしれない。

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湯上がりに2Fの食堂で適当なつまみでビールをぐびっと飲もうと思って

番台のおばちゃんに「食堂はこの階段の上ですか?」と聞くと、

「あ~、もう食堂はやってないのよ。ごめんなさいねえ」とおばちゃん。

なるほど、「休憩所」の看板が下がる階段の上からは

陽気なカラオケの歌声がガンガンと流れている。

今はカラオケが楽しめる休憩場のようだ。

「カラオケの練習ができます」の貼り紙はこのことだったのか。

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帰り道、湯上がりのビールを求めて

豊前街道沿いのこじんまりとした店で、肉うどんをあてにビールをいただく。

身体はまだポカポカしているからビールがめちゃうまい。

かつては「近代的設備を誇る名実共に温泉郷の代表」と、

誇らしげに謳っていた熊入温泉センターも、いまや貴重な昭和の遺産となりつつある。

いつかは現代的なスパにリニューアルされちゃうんだろうなぁと、

思うわけだけど、そうであっても、そうなったときには、

できればこれみよがしな値上げとかしないでほしい。

変わらずに今のように地元の人に愛される場所であり続けてほしいと思わずにいられない。

だってね、何百年も愛されてきた場所なんだからね。

いつまでも愛され続ける、おおらかなゆるい場所であってほしいなぁ。

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熊入温泉センター 入浴料200

山鹿市熊入町72

電話:0968-44-5810

記事:ショチョー

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2015-12-21 | Posted in 四国/九州No Comments » 

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