地下に隠された愛しの自噴泉/吉尾公衆浴場・高野屋旅館

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【熊本 吉尾温泉・吉尾公衆浴場・高野屋旅館】

熊本市に仕事のお客様がいる都合で、熊本へ出張する機会が多く、

それはそれは良質な温泉がたくさんある熊本だから、

ひな研ショチョーとしては、ラッキー!と思わずにいられないのだけれども、

たまにはそんな熊本でも、マイナーな温泉に行きたいなと思っていた。

で、向かったのが吉尾温泉。

球磨川の支流である吉尾川沿いにある

宿が2軒と共同浴場がひとつという、温泉街と呼ぶには小さすぎる温泉だ。

ここの共同浴場が、なんともマニアックなのである。

しかも足元から湯がぷくぷく湧き上がる、うれしい自噴泉なのだ。

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球磨川沿いを走る肥薩線の吉尾駅で降りる。

な~んにもない無人の駅。

駅、川、山。以上ほかになし!そんな駅である。

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吉尾駅から吉尾川沿いの道を歩いて15分ほどいくと

高野屋旅館の建物が現れる。

それを通りすぎてちょっといくと温泉療養所と書かれた

建物へとかかった橋があるのでそれを渡る。

温泉療養所の脇道の突きあたりが吉尾温泉共同浴場である。

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でも、予備知識無しで来たら、たぶんここで引き返すと思う。

それというのも、目の前にはとても温泉施設には見えない、

どう見ても普通の一戸建てにしか見えない家があって、看板とかも一切ない。

さらには、まぎらわしい門柱と表札まであるのだから。

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ところがどっこい。

その普通の一戸建てにしか見えない家こそが吉尾温泉公衆浴場なのである。

というわけで中に入ると、

うん、確かに入浴料とか温泉成分が書かれた貼り紙が貼ってあったりする。

無人なので、置いてある小さなカゴに入浴料金を入れる。

170円。あ、細かいのがない。しゃーない、釣りはいらねえぜ。…と200円入れる。

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さて、じゃあ、風呂場へ行こう…

しかし、そこには薄暗い地下へと降りる螺旋階段があるばかり。

温泉というよりは、地下の怪しい秘密工場へ降りていくかのような。

なんというディープな温泉施設なのだろう。グッとくる!

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なんだか黄泉の国へ降りていくオルフェウスにでもなった気分で

怪し気な螺旋階段を降りて行くと、電気のスイッチがあったので、点灯。

すると、おお、男湯と女湯の入り口がちゃんとある。

「男」「女」のマジックで書きつけられた文字に、グッとくる!

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はやる気持ちを抑えて中へ入ると、

小さな浴室に石のこれまた小さな湯船がひとつ。

湯船の中は石版が腰掛けみたいになっている。

源泉はその下からたえず自噴しているようで、

ときおりぷくぷくと小さな泡を噴き出している。

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う~ん、なんだか愛おしくなる温泉だなあ、ここは。

さっそく湯船につかると、腰掛けみたいになっている石版が

ちょうどいい感じの高さで

湯は温めで透明、かすかな卵臭。さすが自噴泉といいたくなる浴感。

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それにしても、湯につかって感じたのは、

外と遮断されたこの浴室空間が醸し出す不思議な感覚である。

蝉の鳴き声がかまびすしい外とは違って、聞こえてくる音は

地下から湧き上がってくる湯のぷくぷくとした音と、あふれる湯が

排水口に吸い込まれていく音だけ。とても静かだ。

湯がぬるめということも手伝って、なんていうか胎内回帰して

羊水につかっているような感覚なのである。

地下へと降りていくだけあって、小さな空間でありながら

採光をかねた天井の湯抜き窓までがやたらに高いというのも、

そんな胎内回帰みたいな感覚を助長している。

いやぁ、こんな湯はほかにないよなぁ。

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外へ出てからもまだ不思議な感覚が残っていたので、

目の前の河原へと降りて吉尾公衆浴場のつくりをあらためて見る。

上から見ると一戸建ての家のようだけど、

下から見上げるとおもしろい建物だ。

なんだか布袋さまのお腹みたいに突き出たところが

あの地下の浴室だったわけで、

なるほど!この“お腹の中”にいたのだから、

そりゃあ胎内回帰みたいな感覚になるのも無理もないなぁと、

激しく納得した(笑)

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何気に後ろ髪ひかれながら次に向かったのが

来た道すがらにあった高野屋旅館だ。

営業している感があまりなかったのでちょっと不安だったけど、

すみませーん!と声をかけると女将さんらしき方が出てきて

お風呂へと案内してくれた。

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浴室は秘密の地下空間めいた吉尾公衆浴場とは真逆で、

窓がガラリと開け放たれた開放感がある明るい浴室だった。

びっくりしたのが源泉が洗濯機のホースみたいな湯口からごぼごぼと出ていて

オーバフローした湯がドバドバとぜいたくに溢れ出ていた。

おお~!これまた、いいねぇ。

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湯は吉尾公衆浴場と同じようにぬるめで無色透明。

開けっ広げの窓からの景色と、溢れ出た湯が排水口に吸い込まれていく音が

実に心地いい。

さっきまでの閉ざされた空間にいただけに

より一層、この高野屋旅館の開放感が好対照に際立つ。

正直いって、高野家旅館は吉尾温泉公衆浴場のついでだったので、

この湯のありがたい得難さは想定外だった。

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女将さんに「とてもぜいたくな湯で感動でした~」とお礼を述べて

外に出ると、二匹の猫がひなたぼっこをしていた。

そのうちの白黒模様の猫が「かまって!かまって!」といわんばかりに

足にまとわりついてきたので、しばらく一緒に遊ぶ。

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吉尾温泉の好対照なふたつの湯に大満足しながら帰途につく。

そして、なんにもない芳雄駅のホームのベンチで秘密兵器を試すことにした。

「セブンセブン缶クーラーCCL-500」である。

これはなにかというと、500mlの缶がすっぽり入る缶クーラー。

真空二重構造のステンレス製で缶ビールの冷たさも長時間キープとのこと。

いや、なんでこんなものを持参したかというと、

ホント、吉尾駅周辺には、な~んにもないから。

でも、そうはいってもねぇ、

やっぱり湯上がりの冷たいビールをグビグビっと飲みたいもんねぇ。

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缶クーラーからビールを取り出すと、

うん、3時間前に八代駅のコンビニで買ったビールが、まだちゃんと冷えている。

それを使い捨てのコップに注いで、

(缶ビールといえども、やっぱりコップで飲むほうがうまいのだ!)

目の前のゆったりと流れる球磨川にかかげて、乾杯!

なにに乾杯?もちろん、吉尾温泉の好対照なふたつの湯にである。

プハーッ!うまいなあ♡

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■吉尾温泉公衆浴場
熊本県葦北郡芦北町大字吉尾24番地3
入浴料:170円(7:00~19:00 )
■高野屋旅館
熊本県葦北郡芦北町大字吉尾18
0966-83-0108
日帰り入浴:300円
一泊二食:8,000円

記事:ショチョー

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2016-09-09 | Posted in 四国/九州No Comments » 

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