湯船の家紋を眺めながら薩摩藩主気分で/二月田温泉・殿様湯

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【鹿児島 二月田温泉・殿様湯】

島津家といえば薩摩藩の藩主。

名君として名高い島津斉彬なんかが有名ですね。

薩摩藩は、まあ、なんていうか、一筋縄ではいかない藩でもある。

関ヶ原の戦いでは西軍で徳川家と敵対していながらも、

その後は、たとえば有名な篤姫をはじめ徳川の御台所を2人も出したりして、

そんなふうに徳川家との関係を深めたかと思うと、

幕末には倒幕の中心となり、ついには徳川幕府を倒してしまうという、

そういう藩なわけで、歴史の中でも独特なポジションにある

藩だといえるだろう。

さて、なんでいきなり薩摩藩の話をしたかというと、

その薩摩藩主御用達の温泉があるんですね、鹿児島の指宿に。

しかも、そんな由緒がありながらも、

ひなびているのだというだから、これはもう、いくっきゃない。

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九州旅客鉄道の指宿枕崎線の二月田駅で降りる。

指宿駅の隣駅だったりするけれど、こじんまりとした無人駅だ。

そこから10分ほど歩いたところにその薩摩藩主御用達の温泉がある。

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国道226号線の「二月田」の信号があるところに

赤い温泉マークが描かれた「殿様湯」という看板があったので、

そこを曲がって川沿いの道をいくと、ほぼ植物で隠れた看板があった。

でも「旧島津公温泉」という文字が上のほう見えていたので、

うん、間違いなく、ここなのだろう。

矢印が指している方に振り向くと、

たしかに「殿様湯」とどーんと書かれた看板があった。

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さてさて、さっそく殿様湯なる湯につかろうと、

はやる気持ちをおさえて、まず、むかったのが、

殿様湯の建物の裏だった。

なぜなのか?

実はここに、代々の薩摩藩主がつかった湯船が残されているんです。

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で、建物の裏手にいくと、たしかにそれはあった。

でも、なんていうんだろう。

保存されているっていうよりは、ほったらかしって感じである。

風雨に晒されてここでじわじわと朽ちていく…みたいな。

う~む、あっけらかんとしていて…

それはそれで、豪快でよいかもしれない(笑)

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そばにあった説明書きによると

熱い源泉が4つの湯つぼをめぐっていって、

適温になるように工夫されているとのこと。

今も残っているタイルは洋風だ。

当時は貴重で贅沢だったんだろうなぁ。

今となっては想像するしかないけれど、

さぞかしハイカラな浴室空間だったのだろう。

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貴重なものをしっかり拝ませていただいて、

さて、湯につかろう。

殿様湯の入浴料は向かい側の家の玄関で払う。

民家の玄関であるけれど、

ちゃんと石鹸やらシャンプーやらタオルやらが売っている。

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殿様湯の入口の前に

たぬきの置物が置いてある飲泉所があったので、まずはそれをいただく。

ちょっと塩気が感じられる湯。うん、身体によさそうだ。

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建物の中に入ると、おお、なかなかひなびていていい感じ。

殿様というよりは庶民な感じだ。

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浴室も、こちらはハイカラとは無縁の感じだけれども、

湯船の源泉槽に薩摩藩の十字の家紋があった。おお!さすが殿様湯!

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薩摩藩の家紋が存在感を放つ湯船には

ちょっと白濁した湯が陽の光を受けてグリーンに輝いている。

見るからにいい感じの湯だ。

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湯船につかると、ちょっと熱めの湯がすぐ身体にじわじわくる。

おお、いい湯だ、いい湯だ。

この湯船じゃないけれども、

代々の薩摩藩主もこの源泉の湯につかったんだなぁと考えると、

うん、やっぱり感慨深い。名君島津斉彬もこの湯につかったんだからね。

そんなことを思うと、湯船の薩摩藩の家紋がますます存在感を増してくるようだ。

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しばらく独泉を満喫していると、

地元の人らしき人がひとりふたりと入ってきた。

そのひとりのおじいちゃんがにこにこしながら話しかけてきた。

「こん湯ば○△□○熱か△□○△□っど?」

早口の鹿児島弁で、正直、なにいっているのかさっぱりわからなかった。

なんとなくのニュアンスで、たぶん

「ここのお湯熱いだろ?」みたいなことじゃないかと思ったので、

「いえいえだいじょうぶですよ、いい湯です~」と答えたら、

きょとんとした顔をされたので、ぜんぜん違っていたかもしれない。

いや、でも聞き取れない土地の言葉を聞くのもいいものである。

これぞ旅の醍醐味。おじいちゃんの笑顔もくしゃくしゃでカワイイ。

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殿様湯の湯を上がって、

裏手の神社をお参りした。

なんでもこの神社、島津斉興の代に、ここに殿様御用達の温泉施設が

移されたときに一緒にこの神社も移築されたとのこと。

朱色が鮮やかな祠には「湯権現」と書かれてある。

権現とは、いわゆる神仏習合の本地垂迹説における、

菩薩が仮の姿としてこの世に現れた神さまのことだ。

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頭に「湯」がついているので、

湯の神さまとしてこの世に現れた菩薩ということなのだろう。

ま、菩薩にせよ神さまにせよ、殿様湯のありがたい湯に大感謝。

ありがとうございます。と手をあわせた。

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境内に身をかがめないとくぐることのできない

小さな石の鳥居があったのが印象的だった。

この鳥居をくぐるためには、

いやおうなしに頭を下げて礼をするように身をかがめることになる。

たぶん、そんなところに意味があるのだろう。

小さいながらも心に残る神社だった。

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■殿様湯
鹿児島県指宿市西方1408-27
0993-22-2827
入浴料金:300円

記事:ショチョー

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2016-10-26 | Posted in 四国/九州No Comments » 

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