巨大な天狗が見下ろす山あいの秘湯にて。/北温泉

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【栃木県:北温泉】

 

キターーーーー! 北温泉!!!

 

あ、いきなり興奮してスミマセン。

 

北温泉は、栃木の那須湯本の

さらに標高高く行ったところにある山あいの秘湯である。

江戸時代から建物を継ぎ足していった味わい深い木造建築といい、

巨大な天狗のお面が湯船を見下ろす土着的な魅力たっぷりな内湯といい、

現代のせわしい時間とは別の時間の中にあるような北温泉は、

ひな研にとっても、まさに聖地のような温泉なのだ。

たまたまこっち方面に出張だったんで、那須塩原あたりで

温泉宿を探していたところ、ひとり旅ゆえに断られたりしたあとで(ひとり客に

冷たい宿は実に多い)、ダメもとで電話した北温泉旅館であっさりと宿が取れたから、

ちょっと興奮しちゃったわけで…、

なぜ興奮するかっていうとですねえ、やっぱ、天狗の湯なんですよ。

 

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理屈抜きに、いかにも秘湯って感じの、

こんな妖しげな湯船はそうそうあるものではない。

最近では、映画「テルマエ・ロマエ」のロケ地にもなって、

天狗の湯が田舎の温泉として、

なんとも、ゆるくて、いい感じに登場していたのも記憶に新しいところだ。

 

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そんなわけで、はやる気持ちをおさえて、むかったわけだけど…、

いきなり雪が立ちはだかった。

黒磯駅からバスに乗ったときは、雪はパラパラと風に舞っている程度だったのに、

北温泉入り口バス停あたりは真っ白。風が吹くとたちまち粉雪が舞い上がって

ホワイトアウトになるような状態だった。

 

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北温泉旅館はバス停からさらに25分ほど歩いたところにある。

雪を踏みしめながら歩いていくと、なんともいい味をかもし出した

木造の建物が見えてきた。

建物の前には名物の温泉プールが、まるでニジマスの養殖池みたいにある。

さすがにこの雪の中ではつかっている人はいなかった。

 

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北温泉旅館は江戸、明治、昭和の建物からなっている。

新しい建物のほうが快適性が高いので、宿泊料金も

江戸:7500円、明治:8500円、昭和:9500円となっている。

もちろん、ひな研的には快適性よりも古さのほうに惹かれちゃうわけで、

迷わず江戸の建物に部屋をとったのはいうまでもない。

 

玄関の引き戸を開けると、目に飛び込んできたのが、今時珍しい帳場だ。

明治や大正のような帳場がここではまだ現役なのだ。

こういうのは、うれしいねえ。

 

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さて、冒頭ふれたように、北温泉旅館は

江戸時代から建物を継ぎ足していった味わい深い木造建築だ。

それゆえに、実に“探検ゴコロ”をそそってやまない。

というわけで、館内に祀られている、神社や大日如来なんかを見つつ、

迷路じみた通路楽しくウロウロしていたら、

目の前にいきなり天狗の湯が現れた。

 

え?いきなりすぎませんか?

 

だって、フツーは、湯船に至るまでは、まず暖簾とかがあって、そして脱衣所があって、

で、引き戸とかがあって、それをガラッと開けると湯船がある…

っていうわけなはずだけど、

でも、天狗の湯はそんなもんはすっとばして、あっけらかんと目の前にあった。

 

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基本、天狗の湯は混浴だ。

でも、女性はそうとうな強者でなければ入れないだろう。

脱衣所は湯船から丸見えというか湯船の“延長”にある。

新しくつくられたような男女別の脱衣所もあるにはあるけど、

別といっても男女の境は頼りないアコーディオンカーテンでしきられているだけで、

それは普段は開いているし、いずれにせよ、

服を脱いだら裸のまま通路を横切らなくてはならない。

一応、縄のれんがかかっているけれど、

スッカスカで、なにもかもが丸見え、

おじさんのブラ~ンブラ~ンも丸見え状態なのである…。

 

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しかし、やっぱり巨大な天狗の面のインパクトはすごい。

このお面がいつからあるのかはわからないけれど、

天狗の湯自体は江戸の安政時代からあったという歴史ある湯なのだ。

ただ、ひとつ、タイミングが悪かったというべきか、

天狗の面は去年、塗装を塗り替えたばかりとのことで、

古めかしさがちょっと薄れてしまっていた。

ま、メンテの必要はわかるけど、塗り替えないでほしかったなあ…と

身勝手に思ってしまうのです。

 

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天狗の湯のすばらしいところは、

秘湯感たっぷりな妖しげな雰囲気はもちろんだけど、

源泉をどばどばと惜しげもなく注ぐ豊富な湯量もすばらしい。

天狗の湯には、ぜひぜひ夜、ひとりで入ってほしい。

巨大な天狗の面がかもしだす異界空間を、どばどばと注がれる

止まらぬ湯の音がなんとも神妙な感じに盛り上げている。

ちょっと怖いくらいの、忘れられない非日常体験になることうけあいなのだ。

 

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北温泉旅館には3つの源泉があって、この天狗の湯の他に

川沿い露天の河原の湯と、打たせ湯、ぬる湯、混浴の温泉プール、

そして女性専用の目の湯と、男女入れれば全部で8つの温泉がある。

江戸・明治の湯治場感たっぷりな渋い旅館でありながら、

なにげにハコモノ旅館並みにバラエティに富んでいるのである。

圧巻は温泉プールだろう。ホント、知らない人が見たら、

ニジマスとか鯉の養殖池にしか見えない。でも、よく見ると

滑り台とかがあったりするのだ。

つかりたい、というよりは泳いでみたいという気になる温泉だ。

 

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北温泉旅館の名物は天狗の湯、温泉プール、そして実はもうひとつあったりする。

猫ちゃんである。

北温泉には2匹の猫が飼われている。

キジトラのおじいちゃん猫のティティと、三毛猫のモモ。

2匹とも人なつっこいようで、人にまったく動じない。

三毛猫のモモはなんと雄である。

雄の三毛猫は1000匹に1匹といわれる貴重な猫だ。

 

ティティはいつも帳場あたりで、ほとんど置物のように寝ているか、

温かい排水が流れる通路の上でオンドル浴を満喫している。

さすが温泉旅館猫なのだ。

いっぽうのモモは、すきあらば客室に忍び込んでくる。

狙いはただひとつ。温かいコタツに潜り込むことである。

ま、ティティせよ、モモにせよ、

どちらも、冬が厳しい山あいの温泉旅館に暮らすための、処世術というわけだ。

 

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食事は、豪農民家を移築したという、

なんとも風情のある囲炉裏端の板敷広間でみんなでいただく。

料理は民宿のような素朴な料理だ。

重すぎないちょうどいい量で、ごはんがおいしい。

炊き方がうまいのか、米がいいのかわからないけど、

まわりからも「ごはんがおいしいね」という声が聞こえてくる。

うん、やっぱりうまいのだ。

 

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北温泉旅館には長期の湯治客のための自由に使える共同炊事場もあるので、

自炊素泊まりで湯治気分だって味わえる。

個性的な湯がたくさんあって、風情たっぷりな板の間があって、

江戸時代みたいな帳場があって、人なつこい猫が2匹もいて、

山奥の秘湯感が味わえて、昔ながらの湯治場の雰囲気もあって、

北温泉は、なんとも濃ゆ~い温泉なのですね。

 

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今から1200年以上前のその昔、日光山から出羽の羽黒山へ向かう

大天狗が、那須の山の大石に腰掛けて一休みしていたときに

偶然、見つけたのが北温泉だと今に伝えられている。

腰掛けていた大石のあたりからちょろちょろと湯が出ていた。

大天狗が大石をむんずと持ちあげて投げ飛ばすと、

そこからどばどばと温泉が溢れ出た。それが北温泉だったのだと。

 

天狗の湯の巨大な天狗の面が、そんな伝説に由来していることはいうまでもない。

してみれば、天狗の湯は、はるか昔の伝説を今に伝える、

遠い遠い記憶のモニュメントのような湯なのである。

近代化とかハイテク化せず、いつまでもこのままいってほしい湯だ。

間違っても、ゆるキャラとかは導入してほしくない。

(ま、ティティとモモがいるわけだから必要ないよね)

いつまでもいつまでも、ちょっと妖しげな渋い秘湯であってほしい。

 

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北温泉を後にして山を下り、帰りすがらに

麓の那須湯本温泉郷の温泉神社に参拝した。

とても歴史のある神社で、源平合戦の屋島の戦いの英雄である

那須与一が先勝祈願をした神社でもある。

 

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那須湯本まで下ると旅館やホテルがぽつぽつと建ち並んで、

山間の温泉郷らしさが出てくる。

かつて、まだ、バスなんかが通っていない時代、

ここ那須湯本から山をえっちら登っていって、北温泉にたどりついた旅人が、

天狗の湯の巨大な天狗の面に度肝を抜かれたであろうことは想像にかたくない。

なんせ天狗は今よりももっとリアルな存在だったのだ。

 

この山の奥に、すんげえ温泉があるんだよ。なにがすんげえって?

まあ、いけばわかるずらって…。

…みたいな感じに北温泉の噂は広まっていったのではないだろうか。

あれだけのインパクトだ。

たぶん、そうに違いない。

 

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北温泉旅館:http://www9.ocn.ne.jp/~kitanoyu/

記事:ショチョー

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2014-04-03 | Posted in 関東/中部No Comments » 

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