くう~っ!河原の開放的な湯はいいねえ。/那須塩原温泉
【那須塩原温泉郷:もみじの湯、清琴楼、岩の湯】
え~、塩原温泉郷に来たわけなんですけど、
ここに来たら、やっぱりまずはアレなんですねえ。
塩原温泉の名物B級グルメ、スープ入り焼きそばである。
というわけで、バスを降りたその足で、スープ入り焼きそばの人気店こばや食堂へ。
焼きそばなのに、ラーメン丼に入ってスープにつかっている。
ラーメンかなって思いきや…
ところがどっこい、味はやっぱりソース焼きそばっていう、不思議な食べ物だ。
めっちゃおいしいっていうほどではないけれど、
なんかクセになりそうな味で、なかなかイケるのだ。
ここでしか味わうことができないから、
たぶん、塩原温泉郷に来るたびに、
とりあえず食べるみたいな感じになりそう。
スープ入り焼きそば。ちょっと気に入りました。
1200年以上の歴史をもつ塩原温泉郷。
箒川沿いに十一カ所も点在している湯本は、
大網、福渡(ふくわた)、塩釜、塩の湯、畑下(はたおり)、
門前、古町、中塩原、上塩原、新湯(あらゆ)、元湯。
これらは古くから塩原十一湯と呼ばれてきた。
ひとつのエリアにこれだけ違う泉質の温泉が湧いている温泉郷は
全国的にもとても珍しい。
尾崎紅葉、夏目漱石、有島武郎、斎藤茂吉、野口雨情など、
多くの文人墨客に愛されたことでも名を知られている。
というわけで、今日は川沿いの露天風呂を攻めてみたい。
塩原温泉郷の魅力は、なんてったって塩原渓谷なのだ。
風光明媚な渓谷との一体感を身体全身で感じながら、
ゆったりと湯につかる。そんなたまらん至福感を味わいにいこう。
まず向かったのが古町温泉の共同浴場「もみじの湯」。
塩原もの語り館の裏手にある紅の吊り橋のたもとに、
小屋のようなものが建っている。うん、たぶん、あれかな。
遠目に見て小屋っぽく見えたのは、対岸から見えないよう、
簾と板塀が目隠ししているのが小屋みたいに見えたからで、
近づくと「もみじの湯」はかなり開放的な無人の共同浴場である。
まずは料金入れに入湯料の100円をチャリンと入れる。
ベンチと棚があるだけのシンプルな脱衣所で服を脱いで、
とくに洗い場もないので、桶で湯を身体にかけてから湯船につかる。
小判みたいな形をした湯船は、2つに仕切られていて、
普通の湯温と、ちょっと熱めの湯に分かれている。
4月とはいえ、ここ那須塩原はまだ桜前線どころか、
梅がようやく咲きはじめたばかりなので、裸になるとちょっと寒い。
というわけで熱めのほうにつかったら、
思わず「あぁ~っ(濁点入りの「あ」)」っと声が自然に出た。
湯は無色無臭の透明だけど、この肌寒さに染みるように効いた。
7~8人でいっぱいな感じの湯船だけど、
川沿いの開放感がなんともいい感じ。
じわじわと湯を感じながら見渡すと、
箒川の川幅は広すぎず狭すぎずで、これまた、いい感じなのである。
次に向かったのが畑下温泉の清琴楼の露天風呂。
清琴楼は明治からつづく歴史ある宿で、ここで尾崎紅葉が「金色夜叉」を
起草したことでも有名だ。「金色夜叉」を読んだ人ならご存知かもしれないが、
実は「清琴楼」は「金色夜叉」の中で貫一が泊まっている宿の名前。
現在の清琴楼は、当時は「佐野屋」という名前だったが、
「金色夜叉」が発表されてから「清琴楼」に変えたというわけで、
なかなか商魂たくましい。
尾崎紅葉が泊まった本館は現在使用されていない。
ひな研的にはかなりグッと惹かれる建物なんだけどね。
清琴楼の日帰り入浴は500円。
といっても、露天風呂貸し切りの値段だ。
川沿いの露天風呂貸し切りで、この値段はちょっといいかもない。
露天風呂は離れた場所にあって、
今は使われていない離れのような建物(この建物もかなりグッとくる)の
脇を抜けて、さらに橋を渡って、ちょっと行ったところにある。
脱衣所の前が小さな門のようになっていて、
そこに「入浴中」の札をかければ、露天風呂を贅沢に独り占めできるのだ。
湯船は河原の大きな石を寄せ集めたような岩風呂。
う~ん、囲いも目隠しもないから開放感たっぷりでいいねえ。
露天はやっぱこうじゃなきゃ。
ここも、もみじの湯と同じような、無色無臭の透明の単純泉。
湯温はぬる湯直前って感じでいい感じで、いくらでも湯につかっていられそうだ。
それにしてもこの渓谷との一体感…、う~ん、マックス!マックス!
実はこの清琴楼の露天風呂は、大河ドラマ「八重の桜」で撮影に使われてもいる。
八重の兄である、西島秀俊演じる山本覚馬と、後に八重の夫となる、
長谷川博己演じる川崎尚之助が露天風呂で語り合うシーンを覚えているだろうか。
あの、露天風呂が清琴楼の露天風呂なのである。
最後に向かったのは、那須塩原温泉郷の共同浴場の中でも、
人気が高い「岩の湯」だ。
途中、指湯なる看板があって、指湯?と思いながらも看板に導かれるままに石段を下りていくと、
たしかにそこには“指湯”があった。ただ、指をつけるだけの温泉。なんじゃこりゃ?
せっかく来たのだからと、指をつけてみたけど…
まあ、たしかに温泉だよなあ、温かいけどなあ、なんかマヌケだよなあ…
指をつけているうちに、俺はこんなところでいったいなにをしているのだろう…
と、やけにさめた気持ちになってくる…(笑)
気をとりなおして、箒川沿いを「岩の湯」目指して歩く。
最初の「もみじの湯」から約3キロ。温泉につかっては歩いて、つかっては歩いてと、
そんな歩き方にはちょうどよい距離といえるだろう。
塩原温泉郷を歩いていて目につくのは
地元専用共同浴場の湯小屋である。
いかにも小屋って感じの小屋で、でも屋根の上に湯気抜きがのっているから
湯小屋だとわかる。これが見ていて、実に味わい深いのですね。
福渡の橋から続く川沿いの遊歩道をしばらく歩くと
対岸にそれらしきものが見えてきた。
遠目に小屋っぽいものと、湯船が見えるので間違いない。
「岩の湯」のいいところは河原の湯でありながら、
無色透明ではない白濁した湯であることだろう。
まあ、なんていうか、ぶっちゃけていうと、ありがたい感じなんですね。
那須塩原の河原沿いの湯はおうおうにして無色なのに
「岩の湯」には色がついている。ちょっとした特別感がある(笑)
湯船はふたつ。囲いに囲われている四角い湯船と、
川向こうから丸見え状態の岩の湯船。
まあ、野郎なんで見えても減るもんじゃなしということで、
岩の湯船にはいると、ちょっと熱めな湯が
じわじわじわっと身体に効く感じですごくいい。効くなあ。
川向こうから丸見え状態とは、いいかたを変えれば開放感も最高なのである。
あ~、これはいいね。人気の高さにも思わず納得。
これで入湯料200円なのだから実にありがたい。
やっぱり温泉っていうのは、
なんかこう、身体の奥底からなにかが開けていくような、
あの感じがたまらなくて、で、この「岩の湯」は、実にそれが味わえた。
やっぱ、いいねえ、温泉って。
スープ入り焼きそばなる妙なB級グルメにはじまり、
箒川沿いの3つの露天風呂を満喫して終えた塩原温泉郷の温泉巡り。
3つともあっけらかんとした開放感がある露天風呂で、
天気のよさも手伝って、なんとも気持ちよかった。
なんせ湯本が十一カ所も点在しているという塩原温泉郷だ。
まだまだいろんな温泉を楽しめるのだろう。
箒川の渓谷と一体化した風光明媚な温泉郷。
季節の変化も楽しめるし、新幹線駅からバスで1時間もかからない。
気軽に折にふれて行ける温泉である。
くせになりそうな妙な魅力のスープ入り焼きそばが食べたくなったら、
気軽にまた来てみようかな。
塩原温泉郷公式サイト http://www.siobara.or.jp/
記事:ショチョー
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