ほぼ、おばあちゃんちの湯/那珂川温泉旅館
【栃木 那珂川温泉旅館】※閉業いたしました
よく女子が、古い民宿とか、古民家なんちゃらとか、
そういったところに来たときに、
「わあ、まるで田舎のおばあちゃんちに来たみたい♡」…なんていいますよね。
今回は、まさにそんな温泉旅館。
栃木県、JR東北本線の氏家駅からバスに乗って船戸で降りる。
そこから1時間以上てくてくと歩く。
たとえば、こんな感じの道をてくてく。
あるいはこんな農道なんかをてくてく。
そんなふうにひたすら歩いていくと、
1軒の民家のような建物が見えてくる。
それが今回の目的地、那珂川温泉旅館である。
「那珂川温泉旅館」という看板があるから旅館ってわかるけれども、
それがなければ完全に民家にしか見えない。
入り口に立っても、営業しているのかなぁ?って感じだ。
「お願い」と書かれた貼り紙のところどころが文字が消えている。
玄関の前には唐辛子や茄子やらが天日干しされている。
“営業している感”はないけれど、“生活感”はあるのである。
恐る恐る戸を開けて「ごめんくださ~い!」と
声をかけると、「は~い」という声が聞こえて、
しばらくして愛想のいいおばあちゃんが出てきた(まさに、おばあちゃんち!)。
階段の手すりには大きなタヌキのぬいぐるみがくくりつけられている。
おばあちゃんの趣味なのだろうか?
入浴料500円を払うと、
おばあちゃんがサービス券をくれた。
「これ、10枚集めるとタダになるからね」と。
“営業している感”はなかったけれど、マーケティングの基本にのっとって、
ちゃんとリピーター対策はしているのである(笑)
たぶん、農作業を終えた地元の人が入りに来るんでしょうね。
地元の人たちにとっては、このサービス券はうれしいもんね。
案内してくれるおばあちゃんの後について
中庭沿いの縁側を通っていく。サッシはアルミになっているけれど、
懐かしい昔の民家の縁側である。そしてここも“生活感”満載だ。
う~ん、旅館というよりは、これはもう完全に「田舎のおばあちゃんち」である。
浴室は年季の入ったタイル空間。
壁も浴槽の中も、ところどころが剥げているところがいい味出している。
3~4人でいっぱいの細長い浴槽。
さっそく湯につかると、透明の無味無臭の湯は、とろ~りすべすべの浴感。
いや、このすべすべ感はなかなかすごいですよ。とても濃い感じ。
湯温は若干ぬるめだったけれど、
つかっているうちにじわじわとあたたまってきた。
しかし、のどかでいい感じだなぁ。
ここには湯治場めいた激渋なひなび感とはまた違った、
独特なひなび感がある。
それを言葉にするならば、“おばあちゃんち的ひなび感”といったところだ。
の~んびりとしたひとときを楽しんで、湯を上がると
おばあちゃんが、
「おいしくないかもしれないけど、スイカ食べてってね」と。
天井からハエたたきがぶら下がった、
それこそ、おばあちゃんちそのものって感じの部屋にお茶とスイカを用意してくれた。
うわぁ、うれしいなあ。とろすべ湯に身体がぽかぽかになっていたので、
このスイカはめっちゃうれしい。
冷たくて甘くおいしいスイカをいただきながら、
いやあ、こういう温泉もあるんだなぁ、と、ちょっと感動した。
那珂川温泉旅館は、おばあちゃんちの時間が流れる貴重な温泉旅館といいたい。
せわしない現代社会の時間の外にあるような温泉旅館だ。
帰りは農道ではなく那珂川沿いの土手を歩いた。
バッタがそこここからピョンピョンと現れる。
周りは畑、頭上には大きな青空。気持いいなぁ。
途中、「まほろばの湯 湯親館」という大きな温泉施設があったので、
そこでもひとっ風呂いただいた。
いい湯であったけれど、やっぱり那珂川温泉旅館の湯は濃いということが感じられた。
食堂で炒飯をあてにビールをいただきながら、
那珂川温泉旅館の、とろ~りすべすべな浴感を思い出していた。
■那珂川温泉旅館
栃木県那珂川町小川1679-2
0287-96-4353
入浴料:半日 500円・1日 700円
日帰り入浴時間:8:00~17:00
宿泊料金 5,330円
記事:ショチョー
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