地底の活力と一体化できる快楽温泉/千原温泉・千原湯谷湯治場


【島根県 千原温泉 千原湯谷湯治場】
タクシーで千原湯谷湯治場に向かっているときに
運ちゃんが教えてくれた。
「ここらへんの家はみんな千原温泉の源泉を一升瓶に
つめて常備しているんだよね」
「へぇ〜、それって家で足湯とかするんですか?」とボク。
「いやいや、そうじゃなくってあそこの湯は傷に効くから
傷薬として使っているんだって」と運ちゃん。

いや、もう、それを聞いただけで
否応なしに期待が高まった。
だって、傷薬として近隣の家々で常備されているって、
スゴくないですか?

千原湯谷湯治場は数年前までは
一般の人の入浴はお断りしていた療養のための湯治場だった。
それゆえに今も観光色はまったくない
まさに山間にひっそりと営業している湯治場なのだ。

古い木造の建物はファサード面だけ
白いモルタルで補修されているけれども、
いい味を出している。
受付は無人で、鈴を鳴らしてくださいと
書いてあったので、鳴らすと……

ご主人が出てきた。

入浴料500円を払って奥へと行くと
「ゆ」と染め抜かれたコンの暖簾があって
その奥に脱衣所があって、浴室の木の扉がある。

それを開けると湯船へと下る階段がある。
いつも思うことだけど
階段を下って行く湯はワクワクするなぁ。

階段の下には禅の「円相」が染め抜かれた第二の暖簾があって
その向こうにわずかに湯船を満たす黄土色の湯が見えた。
う〜ん、浸かる前から絶対いい湯だと確信。間違いないぞ。

湯船は3人でいっぱいになるような
こじんまりとした湯船。
すでに先客さんが湯に浸かっていたけれども、
なんていうんだろう?
先客さんも完全に湯に身を委ねている感じで、
ますます湯のよさを浸かる前から確信できた!

で、湯に浸かってみると、
やっぱり素晴らしい湯だった。
35度ぐらいのぬる湯。
なによりも感動的だったのが
貴重な足元湧出湯で、湯と一緒に炭酸ガスの泡が
身体をくすぐるようにぷくぷくと上がってきて
それがまた心地いいのだ。
いや、ここの湯の特別な心地よさを
うまく言葉に表せないことに、
なんともジレンマを感じてやまない。
至福の湯といってもいいと思う。
30分、1時間と浸かっていると、
なにか地底の活力と一体化しているような、
そんな湯なのである。

壁面には扇風機が回っていて
「ガスが出ることがあります。扇風機は止めないでください」と
注意書きが貼られてある。
浴槽のフチや床が
析出物でコーティングされていて、
この温泉の濃厚さを物語っている。

先客さんと自然に会話になった。
車で十数分ほどのところに住んでいるとのことで
千原温泉の湯によく浸かりにくるそうだ。
「いやぁ〜ここの温泉はよく効くんですよぉ〜」
と飛び切りの笑顔でうれしそうにおっしゃられていた。
ああ、千原温泉愛を感じるなぁ。

今は千原温泉では宿泊はやっていないが
有料休憩室を利用しての5時間湯治を勧めている。
別料金1200円を払えば5時間内では
「入浴」「休憩」自由とのこと。
食べ物の持込みもオッケー。
ああ、いいな、それ、やってみたいな。

湯を上がってから
ご主人に教えてもらったことによると、
ここ、千原温泉の湯の薬効が一躍有名になったのは
戦後のことだったそうだ。
広島の原爆で被災された人が
ここの湯で湯治して、とてもよく効いたので、
口コミで広がり、被災者の方がお隣の広島から
山を越えて続々とやってきたとのこと。

なるほど、でも、あの湯ならわかるなぁ。
まさに伝説の名湯というわけだ。

いつか5時間湯治をしてみようと
固く心に誓って、千原温泉を後にした。

■千原温泉 千原湯谷湯治場
住所:島根県美郷町千原1070
電話:0855-76-03341
入浴:500円(8:00~18:00、木曜定休日)
休憩室:1200円
記事:ショチョー
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2018-09-09 | Posted in 近畿/中国No Comments » 

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