山鹿の奥座敷で、とろっとろな湯を/平小城温泉・城山公衆浴場
【熊本 平山温泉/平小城温泉・城山公衆浴場】
熊本の山鹿温泉といえばとろみのある美肌の湯として
有名だったりするけれど、さらにその奥へといくと、
とろっとろのそれはもう美容液のような湯があるっていうんですね。
それはホンマかいなと熊本の知人に聞いてみると
どうやら本当らしい。
で、ネットで調べてみると、どちらかというとこぎれいな温泉宿ばかりで、
1軒だけ渋そうな共同浴場「平山温泉センター」があって、
お、ここよさそうだなぁっと、的をしぼって調べていくと、
どうやらそこもこぎれいにリニューアルされたようだった…。
う~ん、出張のついでといえどもせっかくいくのだから、
ひなびてないとなぁと、なおも、未練がましく調べていたら、
お!ありましたねぇ。
ほとんど温泉施設には見えない、なんていうか、
田舎のさえない集会場にしか見えない無人の公衆浴場。
うん、これならひな研的な感じがする。ここへいこう!
というわけでさっそくいきました。
まずは山鹿バスセンターのターミナル裏手にある
山鹿温泉の飲泉所でグビグビっと飲泉。飲泉は飲むサラダだって、
誰かがいっていたけれど、いい温泉は、まさしくそうですね。
内臓がよろこんでいる感じがするものね。
山鹿バスセンターからバスで約10分ほどで「平小城」バス停に着く。
なるほど、まわりは山鹿温泉の奥座敷っていわれていることにうなずける
いい感じの山間の里だ。
バス停近くに「街の酒屋さん」と書かれた酒の自動販売機があった。
酒の自動販売機なんて、久しぶりに見るなぁ~と小さな感動を覚えながら、
湯上がりのビールはここで飲もうと、心に決める。
心癒される里山風景を眺めながら、バス停から10分ちょっと歩くと、
それらしい建物が見えてくる。
でも…、ん?手前になんかあるぞ。石のアーチ?なんだろうか。
近づいてみると、まさに石橋のアーチ。傍らに立てられている説明板を見ると、
なんでも江戸時代末期に造られた「平山橋」なる石橋なのだそうで、
ここらへんは西南戦争の舞台にもなったとかで、薩軍が官軍本営を攻撃するために
この橋を渡っていったそうである。
と、なると、せごどんもこの橋を渡ったのだろうか。
そんなわけで、感慨深く石橋を眺めた後は、いよいよ温泉だ。
うん、石橋の向こうには、たしかに田舎の集会場みたいな建物がある。
ある。あるけれども…
う~ん、ホントにこの中に温泉があるのだろうか?
湯小屋っていうと湯抜き屋根があって、だいたいわかるもんなんだけれども、
どう見ても集会場なのである。
メインの看板はもともとはどこかにちゃんとかかげられていたんだろうけれど
今はほとんど打ち捨てられたかのように、
建物の脇に立て掛けられてあるところに、グッとくる。
いちおう「平小城温泉 城山公衆浴場」と木の看板がかかげてあるものの、
やっぱり田舎の集会場っぽい引き戸をガラガラッと開けてみると、
目の前にガムテープで補強された手づくり感満載な料金箱が置いてあって、
「1人100円」と書かれてある。
お、こういうの、なんか素朴でいいなぁ。
気になったのがその素朴な料金箱の奥に広がる畳敷きの空間である。
休憩所かな?それならさっき缶ビール買って、ここで湯上りビールを飲むのも
よかったかもしれないなぁ。
部屋の隅にはテレビがあって、画面に貼り紙が貼ってある。
「故障」とか書いてあるのかな?と見ると、予想に反して「禁煙」と書いてあった(笑)
まあ、無人の施設だから、ここではタバコは吸ってほしくはないのだろう。
でも、なにもテレビの画面に貼らなくたって…
いや…、こんなふうにテレビの画面のど真ん中に貼れば誰だって見る。
否応なしに見る。そこまで考えてのことなのか…。
だとしたら、なかなか賢い?いや~、そんなことないな(笑)
建物内の、ところどころを探検してみると(ま、探検っていうほどの広さじゃないけど…)
「温泉をくんで帰る人はちゃんと料金を払ってください」的な貼り紙が目についた。
なんだか、この施設を管理している人のご苦労がしのばれる。
さてさて、じゃあ、さっそくお湯をいただこうと、
浴室のドアを開けようとすると…
ん?取っ手がない。
取っ手があるべきところはポッカリと穴になっていて
そこにボロタオルがくくりつけられている。これもいきなりグッとくる。
自分でも、なんで、こういうのにいちいちグッときてしまうのだろう?と
呆れながらも、ウキウキしながらドアを開ける。
こじんまりとした、ふたつに仕切られたタイルの浴槽が目に飛び込んでくる。
窓からは、さんさんと陽光が入り込み、うん、いい感じなのである。
さっそくつかってみると…
おお、なるほど、とろっとろの湯。これは素晴らしいね。
山鹿温泉のとろとろ湯も感激したものだけど、平山温泉はもっととろとろだ。
うん、“まるで美容液みたいな”っていうのも、あながち大げさではない。
う~ん、なんていうか、地元の人以外は、まさかこの中に温泉があるなんて、
しかも極上とろとろ湯があるなんて、きっと思いもよらないようなところで、
こうして湯につかっているのは、実に感動的だ。
世の中に対して、「どうだぁ、うらやましいだろう?」と、訳もなくいいたくなってくる。
いやぁいやぁ、これは気に入りましたよ。
湯から上がって、すぐ近くの神社をお参りした。
地元の人に大切にされている感じの、とても良い感じの神社だ。
なんか、極上の湯で禊をして、神さまにお参りしている感じでとても清々しい。
大満足でバスに乗って山鹿温泉へ。
時間がまだあるので、山鹿最高のひなび湯の桜町温泉へ向かう。
山鹿温泉は温泉街のシンボル的な存在の「さくら湯」があるけれど、
ひな研的にはここ激渋な「桜町温泉」と、ゆるゆる昭和な「熊入温泉センター」なんですね。
とくに「桜町温泉」は、ひなび度でいえば、全国レベルっていえるだろう。
昭和レトロな脱衣所、いや、昭和ひなびレトロとあえていいたい。
どう見てもとっくに現役を引退しているマッサージチェアが
鎮座ましましているところにグッとくる。
お湯はこちらも山鹿らしいとろとろ湯。
「桜町温泉」の湯をじゅうぶん堪能した後は
山鹿の温泉プラザ内にある「早野食堂」で焼きうどんと湯上がりのビールをいただく。
温泉プラザ内で1店だけ渋い異彩を放っているこの店は、一度入ってみたかった。
ビールのアテに焼きうどんをつつきながら、
店主のおばちゃんと、常連さんらしいおじさんとあれこれ語る。
(でも、おじさんの熊本弁がきつく、ほとんど意味がわからず…)
酔いがまわってきて、いい感じのほろ酔い加減になりながら、
ひなびた温泉巡りって、こういうひとときがいいんだよなぁ、と、
しみじみ思いながら、ついつい瓶ビールをもう1本頼む。
ああ、このゆるい時間、いつまでもつかっていたくなる山鹿のとろとろ湯の
心地よさに似ているなぁと、何気に思った。
■平小城温泉 城山公衆浴場
熊本県山鹿市平山5084-4
入浴料金:100円
13:00~22:00(定休日:毎月11日)
■桜町温泉
熊本県山鹿市山鹿957-3
電話:0968-43-6659
入浴料金:150円
5:00~12:00 13:30~21:30(定休日:毎月第1、第3、第5金曜日)
■早野食堂
熊本県山鹿市山鹿1 温泉プラザ山鹿 1F
電話:0968-44-2089
10:00~15:30(無休)
記事:ショチョー
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